名前:法螺 主人(ほらぬしひと)
異名等:ホラーゲームの主人公
種族:人間
性別:男性
年齢:20歳
身長:172cm
体重:63kg
スタイル:平均・やや筋肉質
台詞等:
「名乗る必要ないだろ」「ステータス画面見ろよ」「NPCなら」「見えるはずだ」
「は?見えない?」「嘘つけ」「Xキーで開けよ」「わかるだろ?」
「……本当にわからないらしいな」「いいね」「俺は法螺 主人」「よろしく」
[エモート]<ぴっ [挨拶]<ぴっ
法螺は気さくに挨拶をした。しかしなにもおこらなかった。
髪:少し明るい黒髪、無造作な短髪
体:やや筋肉質
肌:日焼けしてない肌色
頭:(なし)
目:深く暗い黒、ハイライトがない
首:(なし)(冬はロングマフラー)
胴:血汚れの目立たない黒地に赤でバンド名が書かれたシャツ
背:小さいリュック
腕:安物の腕時計
手:(なし)
腰:迷彩柄のカーゴパンツ
足:スニーカー型安全靴
下着:薄っぺらいトランクス
他アクセ等:星空の描かれた鍵を肌身離さず持ち歩いている
その他:リュックにバール、ドライバー、ペンチなどの工具
性格・特徴:無個性・人間嫌い・姿勢がいい・ホラーゲームの主人公
大学一年男子。ホラーゲームの主人公を自称し続けて14年。完全に頭がおかしい扱いを受けている……
かと思いきや、普段はそれなりに猫を被った日常を過ごしているのであまりそういった扱いは受けていない。
6歳の時に風邪をひき、母に連れていかれた病院で初めての"ホラーゲーム"に巻き込まれる。脱出までの累計死亡回数276回。
脱出直前に殺したボスは異形と化した母だった。この時点で法螺は自分の人生はゲームなのだと理解した。
以降20歳までの14年間で73度のホラーゲームに巻き込まれた。累計死亡回数は4382回。
12歳の時、修学旅行で行った登山先のロッジがホラーゲームの舞台になり、友人が全員ゾンビ化した際に「もうこんな人生嫌だ」と諦め
そこで2500回ほど無抵抗で死んだ。死亡→即リスポーンタイプの死にゲー舞台だった為死ぬペースがやたら速く、
股間の大事な物を男友達のゾンビに食われた時に流石にキレて真面目に攻略した。これ以降の法螺は
「ふざけんな」「俺の人生だぞ」「こんなクソゲー絶対クリアしてやる」の気持ちで片っ端から"ホラーゲーム"をクリアしている。
このホラーゲームはある種の異能のような物であり、法螺自身を中心として引き起こされ、尚且つ周辺を巻き込んで行われる。
通った病院でゾンビが出たり、学校に殺人鬼が侵入したり、気付くと見知らぬマンションにいたりするし、
母が異形になったり友達がゾンビになったり父が実はマッドサイエンティストだったりととにかく巻き込まれる。
また、ホラーゲーム本編で起きた出来事は本編の外(つまりは日常)において無視されるように現実改変が行われる。
例えば母の件では迎えにきた父に「やっぱり家政婦と一緒にいかせるんじゃなかった」と言われたり、
ロッジは脱出して場所を伝えたらその場所には朽ちた山小屋が1つぽつんとあるだけだったとなったり。
また、ホラーゲームの舞台は全て屋内になり、中庭やバルコニーなどの僅かな外以外には出られないようになっている。
勿論お約束として柵を無理矢理乗り越えたりすると強制バッドエンドが待っている。
ゲーム外の日常においては他人と深い関わりを持たぬよう目立たず生きる事を心掛けている。
これはホラーゲームの舞台生成に他人を巻き込まない為であり、余計な死亡要因を増やさない為でもあり……
そしてなにより、現実改変のせいで他人に裏切られ続けてきたので誰も信じていないからでもある。
法螺自身がどれほど壮絶な経験をしても、他人からは冗談か絵空事にしか捉えられず、耳を貸してくれない。
耳を貸してくれる人が稀にいても、そいつは確実にホラーゲームに巻き込まれて死ぬ。
「無駄だ」、そうゲームから伝えられているようだった。法螺もそう考え、自分以外の全てを"NPC"として扱う事に決めた。
グッドエンドなんて目指さず、トゥルーエンドなんてどうでもよく、とにかく自分が生き残る事だけを重視し続けた。
自分以外は全てハリボテだ。全て盾だ。全て敵だ。そう考える事で、生き続けた。クリアし続けた。
そうしなければ、心がもたなかった。父も母も自らの手にかけ、にも関わらず誰も裁いてくれないこの世界では。
20歳を迎え、それなりの大学に入学。ゲームクリアの為に勉学に励んだ結果特待生入学で学費は然程心配せずに住んだ。
しかし最も心配していた事態は夏頃、当然のように起きた。大学キャンパスのホラーゲーム化である。
もう80回近くプレイして慣れてはいた。慣れてはいたが、初見殺し相手にはどうしようもない。
法螺は扉を開けた瞬間の爆発で4383回目の死を迎えた。いつも通り暗転。いつも通りの「Continue?」いつも通りの「はい」。
……しかし、その日は中々復活のロードが終わらなかった。首を傾げた頃、ひらりと手元に舞い込んだ一枚の手紙。
――それは「フタハナ」への招待状であった。法螺は首を傾げつつもサインし……そして、デスゲームの舞台へと降り立った。
結局死ぬような場所なのか、と思いつつ、周囲を見渡す。妙な連中ばかりだ。それこそゲームの化物のような奴から美少女まで。
それらもどうせNPCなのだろう、と思いながら……いつもと違う"屋外"というシチュエーションに、法螺は心が震えるのを感じた。
「ここは」「今回は」「何かが違う」「特別な舞台だ」、と。そしてそれは実際、そうだった。
ふと、会話した相手の言葉尻を捉えて数年ぶりに聞いてみた。「お前もプレイヤーか?」相手はプレイヤーでこそなかったが、
その人は生きていた。NPCではなかった。会話しても死ななかった。表面上悪態をつきながらも、胸が踊る。
久々に"ゲームの主人公らしさ"を捨てた。全力でクリアを……特別な、トゥルーエンドを目指して走った。
信じてくれた人を、人間である事を思い出させてくれた恩人を思いながら。全力で走って、走って、走って。
自分のステータス画面にいつの間にか追加されていた"クエスト"を全てクリアすれば元の人生を取り戻せると知った。
そして、あと二つという所まで到達した。『誰かと???になる』『誰かを???』。その二つの達成で元の人生を取り戻せる。
ひとつは、きっと「誰かとバディになる」だろうと予想がついた。そしてもう一つ、クエストの一番最後の欄。
デスゲームにおいて、最後の目標になるものなどひとつしかない。『誰かを"殺す"』。そう法螺は結論付けた。
法螺はナイフを握り締めて立ち上がり、数度会話した人々に向けて刃を向ける事を――クエストを達成することを、やめた。
クリアは出来ない。それが結末だ。全力を傾け、それでも無理だった。そして、時間切れ――フタハナの終了が迫っていた。
バディを見つける事はできても、"生きている"誰かを殺す事はできない。
法螺はクエストの達成を諦め、海へと向かった。ホラーゲームに巻き込まれる日々では自由に見る事の出来ない景色を求めて。
辿り着いた夜の海はどこか恐ろしく、冷たく、深く……そして、広かった。悔しさが粒となって頬を伝い落ちる。
ああ、結局クリアは出来なかった。……間もなく時間切れ。法螺はナイフを自らの腹に突き立てた。誰かじゃない、自分を殺す。
システムの思い通りにゲームオーバーなんかしてやるものか。同時に、これでクエストをクリア出来たなら"次回"に繋がる、とも。
……法螺主人は死んだ。ずっと忘れていた死への恐怖。クリア出来ない事からくる諦め。
最期に思い浮かんだ、フタハナで出会えた恩人への感謝。それらが複雑に絡みあいながら、法螺の意識を暗闇に埋めていった。
クエストクリアのファンファーレが鳴り響いた。『誰かを???』。それは――『誰かを"信じる"』。
今まで信じる事を辞めていた男に最後に課せられたクエストは、この死と混沌の島で信じられる誰かを見つける事だった。
……最後の最後、死の直前になって漸く完全に誰かを信じることが出来たが、ゲームはもう終わった。
そして……フタハナに、コンティニューはない。法螺の人生は全てが"なかったこと"になった、はずだった。
*NEWGAME*
法螺は同じ人生を歩んだ。ただ、同じでありながら違う人生を。幼少の折から、トゥルーエンドを目指して進んだ。
ひたむきに、諦めずに完璧を目指した。人をNPCと言わなくなった。そして、"クリア"の後は必ず夜空を見上げた。
空には満点の星が、いつだって必ず見えていた。それを見る度、涙を流す。涙の理由はわからないが、星空を見る度必ず流れた。
心には温かい気持ち。どこの誰かもわからない名前が口をついて出て、笑顔もこぼれる。
法螺は何も覚えていなかったが、どこかの誰かへ感謝しながら、他人と共に"生きて"いる――。
――後年。法螺主人、御歳92歳。主人公は独り身のままそんな歳まで生き延びていた。
老化と共にホラーゲームとの関わりも随分減って、すっかり痴呆が進んだが、巻き込みたくないからと断固として深い仲の者は作らなかった。
しかしある時電撃が走ったかのようにベッドから飛び起き、ホームヘルパーの手を振り切って近所の古びた館へ走る。
そして居合わせた3人の若者達と当然のように"ホラーゲーム化"した館を探索し、
本棚から不死化する術の情報を手に入れ、その術に失敗して出来上がった化物と遭遇、これを退けた。
結果、お約束のように炎と共に崩れる館。必死に脱出する4人。そして……法螺を除いた3人は脱出に成功した。
足腰のせいか、煙のせいか、或いはそれ以外の理由か……法螺は途中ではぐれ、行方知れずとなってしまった。
法螺がどうなったか知る者はいない。
館は崩れ落ち、その場にはもはや廃墟しか残っていない。
誰もそんな場所で何かを探さない。誰もそんな場所知らない。覚えてない。
ホラーゲームは現実には決して持ち込まれないから。
ただ、……その誰にも知られない場所の廃墟からは、星空が綺麗に見えるのだ。恩人が見せてくれる、最高の星空が。
「だから」「これが俺にとってはトゥルーエンドだったってワケ」「サンキュー布施くん」