サイファーの指が、ゆっくりと下部を撫でる度に、正直な身体はゆっくりと芯を帯びてゆく。
しかし反対にゼルの口は想いを素直に吐きだすことは出来なかった。
下への愛撫はそのままに、サイファーはゼルの肩口に顔を寄せると首筋へとキスを落としだした。
ちゅ、ちゅ、と音をたてながらゼルの首筋を舐めあげる。
ゼルの口から、おもわず悩ましげな吐息が漏れだす。
しかし次の瞬間、ゼルは何かを思い出したかのように意識を浮上させると、ちいさな息も漏らさぬように固く口を閉じた。
それを見ていたサイファーは問うようにゼルの唇へと口を寄せた。
何度も唇を吸い、通せとばかりに口を割開こうと境を舐める。
普段なら多少の抵抗はあるものの、すぐに素直にサイファーのキスを受け入れるゼルなのだが、今日はなかなか素直になろうとしない。
そればかりか、首を振ってその追撃を振り払ったのだ。
「てめぇ…いい覚悟じゃねぇか」
サイファーは顔を上げると、撫でていた下肢に強い刺激を与えだした。
一瞬驚いたように目を見開いたゼルだったが、止む事のない刺激にそのまま固く目をつむり、それでも声を漏らすまいとやわらかな枕に頬を擦り付けながら耐えはじめた。
硬くなった先指でをくじかれて、耐えるゼルから思わずというように鼻に掛かる声が漏れる。
だが瞬間しまったというように、またゼルは口を閉じて声を殺すのだ。
「やめだ」
突然サイファーの手が止まり、被さってた体が離れた。
「え…」
サイファーの体に遮られていた光がゼルへと戻ってくる。
いきなりの中断に驚いて、おもわず目を開いてサイファーを探してしまう。
「何考えてやがる」
体を起こしきったサイファーは、まっすぐゼルを見つめていた。
「体はしっかり反応しやがるくせに、俺とじゃ気はノらねぇってか」
逆光になったサイファーには深く影が落ち、表情がうまく見えない。
「それとも飽きたのか?」
自嘲するような乾いた笑いと共に、ゼルには信じられない言葉が聞こえてきた。
「ちがっ…!」
思わず体を起こして声を荒げた。
「じゃぁ何だ言ってみろ!あの店入ってからだろうが!てめぇの様子がおかしい事ぐらい分かってんだよ!」
サイファーももう我慢できないとばかりに声を上げた。ゼルも勢いに乗って続いてしまう。
「あんたこういう風にヤんのが好きなんだろ!聞いたんだからな!」
「誰がんな事言いやがった!」
「店にいたあの女の子達だよ!!」
「……あ?」
感情に任せて吼えていたものの、予想外に答えにサイファーからおかしな音が漏れる。
だが興奮したゼルはそれに気づく事が出来ず、もう止まれなかった。
「どの子ともずいぶん深い仲なんだな!みーんなあんたとの事話してたぜ!」
「アレがデカイとか!ガーデンでは夜の訓練、すんのか、とか…」
口に出して聞いたときの不愉快さを思い出したのか、ゼルの言葉がだんだんと失速する。
「声だすのとか…」
それだけ言って、完全にゼルは下を向いて口をつぐんでしまった。
下を向いているため見えないが、目の前の男が軽く息を吐くのが聞こえた。呆れているのだろうか。
ゼルは思わずとはいえ言ってしまった自分の口の軽さを責め、ため息をついた。
だが次の瞬間、トン、と胸を押されてスプリングのきいたベッドへと倒れこんだ。
それに気づいた時には、もうサイファーの体によって再び光は遮られていた。
「そいつらは声がなんて言ってたんだ」
耳元でサイファーの低い声が響く。自分の口の軽さがこんなに憎いと思った事はない。その心地よさに再び口から声が滑り落ちた。
「声出すと、あんた怒るって…。煩いって」
「んでテメェは声殺してたってか?」
「……」
サイファーが再び首筋にキスを落としだす。
「他には何だ?」
ゼルはくすぐったそうにキスを受けながら、囁くようにサイファーへと訴えかける。
「キスが嫌いだって、下舐められんのも」
サイファーは何が可笑しいのか、クツクツとゼルの耳元で笑いを堪えている様だ。
「で?」
自分はおかしなことを言っているのかと不安になるが、もうここまできたら今更だとささやかな訴えを続ける。
「あんまり、触ったりしないって…ぜ、ゼンギとか」
「へぇ」
「気持ちよくも、しない、んでイったら終わりって」
「そうかよ」
サイファーは首筋から耳元へと攻略を移し、舌と同時に吐息も注ぎ込む。
「そりゃ全部事実だな」
まだ続きます汗
引越しや職場が変わったりしてバタバタしてたりしまして、更新遅れ気味になっております。すみません。更新したい…!
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