「おい、何ぼーっとしてやがる」
突然ゼルの頭上から聞きなれた声が掛けられた。
ビクリとしてそちらに目を向けると、サイファーが不審な瞳でこちらを見つめていた。
「なんだ?全然食ってねぇじゃねぇか」
まったく手が付けられていないゼルのプレートを見て、サイファーは眉を潜める。
「あ、えと、あ、味が!あんま好きじゃなくてさ、はは」
2、3しか口をつけていない食事は味など分かるはずもなかったが、必死に誤魔化そうと試みる。
本当のことが気になって仕方が無い、が、さっきまでの事をなんと説明してよいかも分からなかった。
「も、もう出ようぜ!結構いい時間だし」
まだ追求を緩めそうに無いサイファーの気を反らそうと、ゼルは急いで席を立ってサイファーの裾を引っ張る。
その様子を辿っていたサイファーが、一旦は折れてやるとばかりに大きく息を吐いた時、先ほどまで嫌と言うほど聞こえていた可愛らしい声達が、大きく二人の背中に向かってかけられた。
「あ~サイファー!ほんとに居たー!」
「サイファー久しぶり~」
明るく弾む声に、ゼルは一瞬にして再び固まってしまった。だがそのまま無視する訳にもいかず、ギギギと音がしそうなくらいぎこちなくそちらに目を向けると、イメージそのままの可愛いらしい女性達がこちらに向かって小さく手を振っているのが見えた。
何かをサイファーに言わなくてはと思うのだが、彼女達がサイファーと関係を持ったのだと思うと、声にならない音のようなものが口から出るばかりであった。
だが、発せられたサイファーの一言に目を見開く
「誰だテメェ等。……覚えがねぇ」
声を掛けられたサイファーといえば、そちらにちらりと目をやったかと思うとめんどくさそうな顔をして少し記憶を探っていたようだが、そのまま興味を失ったように背中を向けて歩き出してしまった。サイファーの背中に、彼女達の非難するような視線と声が投げかけられるが、やはり意にも介さないようで、彼女達を振り返ることは無かった。
「おい行くぞ」
「あ、え、おう、いいのかよ?」
呆然としていたゼルはといえは、引っ張っていた筈の裾に引っ張られて、ようやくサイファーの後へと続いた。
気もそぞろのままサイファーの後を追っていたゼルは、気がついた時にはホテルの一室のドアの前に連れられていた。
今日泊まんの?いつ部屋決めたんだ?と状況を飲み込みきれて居ないゼルであったが、サイファーの話によればどうも先ほど席を立っていたのは、この部屋をとるためであったらしい。
気分が悪そうに見えたのか(事実良くは無かったが)、部屋に着くなりスッキリして来いと押しやられ先にシャワーまで済ませてしまい、今は一人ベッドでサイファーを待つ身だ。
「やっぱ、するんだよな…。」
何度も交わり馴染んだ肌を受け入れる事に今更抵抗があるわけではないが、やはり先ほどの彼女達の話が気になってしまう。
そわそわと落ち着かず、セットを落としたせいで顔に掛かるようになった前髪を何度も掻き揚げる。
どうして、あんなに話の内容が食い違ったんだろうか…?
実は、彼女達の話のようなハードなやり方が好みだったりとか、するのだろうか。サイファーの普段のサディストっぷりを考えれば、十分ありえる話のような気がする。
そうであるなら、大した知識や経験もないヌルい自分とのソレは、さぞつまらない行為に違いないのだ。
「おい!」
どれだけ時間がたったのか、俯いて悶々と考え込んでいたゼルに、再び頭上から少し苛立った声が掛けられた。
はっと顔を上げると、タオルを巻いた腰をかがめてこちらを覗き込んでいたサイファーとばっちり目が合ってしまった。
「てめぇ、さっきから何を気にしてやがる」
今度はもう折れる事はしないと匂わせながら、サイファーはベッドへとあがって来る。
自分へと覆いかぶさろうとするサイファーのしっとりとした肌に、拭い切れていない雫がいくつも光って、彼の肌を辿って落ちていくのが目の端に映った。
その艶かしさにドクリと心が跳ね、思わず下肢に血が流れる。
「シたくねぇ、って訳じゃ無さそうだな」
サイファーが探るように下部を辿りながら、顔色を伺っているのが分かった。
もうちょっと続きます。
拍手押して下さった方ありがとうございます!
とりあえずこの小話の完結を最優先で更新していこうと思いますのでもうしばらくお付き合い頂けますと嬉しいです!
おっぺけ様コメントありがとうございます!
少しでもお楽しみ頂けている様でとても嬉しいです!!頑張る脳内に力が漲ります!
サイファーはゼル一直線に想いを寄せているのがほんっとに萌えますよね!ゼルは間違いなく色んな事を引け目に思っていると思います笑 チキン野郎ー!それをサイファーが常識なんて吹っ飛ばして変えていくのが大好きなんです…!もちろんゼルが確信した後は、スコールあたりから「またやってるのかあいつらは…いい加減にしてもらえないか」と言わんばかりの視線を貰っちゃうようになると思います!そして次第にお互いの存在が馴染んで、阿吽の呼吸でいろんな事が分かるようになっていく大人なサイゼルになっていったりするんじゃないかと思います!本当にサイゼル可愛いですよね…!私も辛抱たまりませんっ!
コメントありがとうございましたー!