それだけではない、溶けた頭であまり覚えていないが、下肢にも口を寄せたような気がする。
彼の味を思い出せるのだ。その温度も。その時の顔も。
そう、確か何度かキスをして、先を舐めたのだ。
サイファーは眉根を寄せて、見たことも無いようなすごい顔をしていたのを覚えている。
なんか、あの子達が言ってるのと全然違うような…?
サイファー、の話なんだよな…?
もしかして別のサイファーって奴がいるのかも…。
まさかの、だが十分にあり得る結論に急に、食欲が戻ってきたような気がする。
気分もどこかスッキリして、後ろの声もどこか他人事のように聞こえてくるから不思議だ。
「それにさ~声出すと怒るんだよね~煩いとか言って」
「ね~出ちゃうのは仕方ないよねー」
「演技とかしてると思われたのかなぁ~?」
「でも演技なんてしてる暇なくない?」
「無い無い~!自分で動かないといけないしー」
「そうそう!自分でイイとこ当てに行かないと~」
まったくひどい男も居たものだとゼルは呆れるばかりだ。
もし自分が女性を相手にしたのなら絶対に優しくしてやるのになぁと、もう一生無いであろう可能性に思いを馳せる。
サイファーだったら、いやその、俺の方のサイファーの事だけど、あいつだってそれなりに扱うと思うのだが。現に俺に対して、声出すななんていったことは一度も無い訳で。むしろ…。
──なに声殺してやがる
サイファーの囁くような声が耳元で響いた。
「だって、変、だろ」
何が、と言いながら耳に舌を這わせられて、また声が漏れてしまう。
「…野郎の、声だぞ?…萎えるだろ」
サイファーはゆっくりと埋めた腰を揺らしながらゼルの言葉を聞いていたが、最後の言葉に眉尻をピクリと引き上げる。
「萎えるだぁ?」
そういって、ゼルの喜ぶ角度を突き上げだした。
「ぁっ…ぁ!…っぁ!」
ゼルも負けじと必死に歯を噛み締めて声を殺そうとしていたものの、敏感な部分を何度も攻められて、我慢しきれずついに声をあげ出した。
「おら、どうだ?ゼル。」
そういって、声をあげ続けるゼルに再び囁く。
「萎えちゃいねぇだろっ」
先ほどよりも硬くなった芯を打ち込みながら、テメェのイク声が聞きてぇんだと、ゼルのスポットを熱く突き上げる。
ゼルはと言えば、耳元で荒くなるサイファーの声に、萎えるどころか己の芯も熱くさせていた。
そういやぁ俺も演技なんてしてる暇ねーなー。考えた事も無かったぜ。
ってか女の子って演技するのか…!
衝撃の事実を知ってしまったゼルであったが、更に上の衝撃が彼を襲うこととなった。
「サイファー自分がイったら終わりだもんねー」
「ほんっと、何でかなー。もっとじっくりさ~」
「んー、戦いに身を置くと早くなるんじゃない?」
「あーガーデンでそういう教育受けてる的な?」
「SEEDの科目にあるんじゃない~?夜の演・習!」
あははは~やだ~と可愛らしい声が響き渡るが、ゼルはフォークをステーキに突き刺したまま再び凍りついていた。
ちなみにそんな演習が無いことはゼルは身をもって体験済みだ。
やっぱり彼女達のお相手はサイファーのことだったのだ。少なくとも、ゼルの恋人であるサイファー以外に、ガーデンにサイファーという名前の学生はいない。ということは、それ以外の可能性は、もう考えられなかった。
もうちょっと続きます
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