バクバクと心臓の鳴る音が耳元まで聞こえてくる。冷や汗と共に、手にまで震えが走る。
聞きたく無い気持ちと、気になる気持ちが交錯して全く身動きが取れない。これでも高ランクSEEDだというのに、恋愛事となるとそれこそ素人以下になってしまう。
そんなゼルの気持ちを知る由もない彼女達は、更に話に花を咲かせている。
「サイズがさぁ、堪らないよね~」
「そうそう、おっきいんだよね」
「あたし最初入るか心配だったー」
後ろから聞こえる声が否応無しに耳に飛び込んでくる。
なんて話をしているんだろう。
具体性を伴ったやり取りが、思わずサイファーとのソレを思い起こさせてしまう。
更に薄々知ってはいたが、自分以外と肌を重ねていたという事実がゼルにのし掛かる。
沢山女の子を喜ばせたのだろうか。彼女達の言う、大きなソレで。
甘い言葉を囁いたのだろうか。いつも自分にするように。
最中のサイファーの熱を知っているのだろうか。…あの顔も。
もはやゼルの気持ちはミキサーでかき混ぜられたのかというほどグチャグチャになっていた。
要するには嫉妬なのだ。彼の心が、身体が自分だけに与えられたのではないのが悔しいのだ。只でさえ自分は男で、女性とするのとは訳が違う。彼女達との方が具合が良かったなどと思われていたらと思うと、気が気ではいられない。
だが音だけは間違いなく耳へと拾われて行く。
「あたし濡れやすいからなんとかなってたんだけどね~」
「私もだよー。サイファー全然だからさぁ」
「あー、やっぱみんなもだったんだぁ」
「「「前戯無し!」」」
……ん?
予想もしない台詞にゼルの思考が停止する。
しかし彼女達は口々にそうそうーと同意を示して盛り上がっている。
どうも全員に覚えがあるようだ。
前戯無しって、前戯をしない、って事だよな…?
え…?そんな事あんのか…?
残念ながら未だ女性と関係を持ったことのないゼルではあったが、それが普通では無いことぐらいは知識として知っている。しかしなにぶん経験がないのだ。もしかして聞き間違いだったのかもしれない。性器増し…だったのかも…などと思い始めた矢先に、更に衝撃の発言が被さってきた。
「しかも、愛撫も無し!即挿入なのよねー」
「ねー!この豊満な胸に興味無いのかしら」
「あたしのお尻だって負けてないのに~」
「あ~んサイファーにさわって欲しい~」
ゼルはもう食事を取るのも忘れてすっかり固まってしまっていた。
いや、最初から固まってはいたのだが、今は意味合いの違う固まり方だ。サイファーとの情事を明け透けと話す女性達に、そして過去のサイファーの暴挙にだ。
そんなに酷いセックスをする男だっただろうか?でもまああのサイファーだしなと納得しかけたところで、ふと情事の際自分を甘く呼ぶサイファーの声を思い出した。
ゼル…
そう言って、サイファーはいつもどうするんだったろうか。
記憶の中で呼ばれた声に急速に脳が動き出した。
続きます
拍手ありがとうございます!コメントもありがとうございます!
明日早いのでお返事次にさせてください!すみません!!