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は~~というため息がガーデンの廊下に響きわたった。
さっき命令書が届いて、まーたあのバラムの外れの演習場での訓練を言い渡されちまったってわけ。今度は引率側だけどな。
今度こそ個室を貰える…筈だ。
どっちにしろあまり良い印象はないのは確かで、俺は消灯間際の廊下をがっかりしながらとぼとぼと歩いていた。
すると、後ろから低く響く足音が聞こえてくる。そうして真後ろに来たと同時に、おい、と声が掛けられた。
そっと振り返ると、サイファーがこちらを見下ろしていた。
「チキン野郎」
そう言ってすっと目を細めた。
そのまま視線を寮の方へ投げて、また再び俺を見下ろした。
今夜も誘いに来たのか。
俺は「いいぜ」と答えて、歩き出したサイファーの後ろに続いた。
息の弾むサイファーに突き上げられる。
最近の俺はすっかりこいつに飼いならされちまって、後ろで快感を感じられるようになってきてしまった。恐ろしいぜ。
だが今日は先ほどの命令書の件もあって、俺はちょっと集中できてなかったと思う。
それを見抜いたサイファーは、動きを緩やかにして俺の様子を伺ってくる。
「浮かない顔だな」
「ん?ああ、ちょっとな…」
そう言って言葉を濁すと、何を勘違いしたのか良くねえか?と探るように腰を動かし出す。
「んっ…、ちげーよ。またあの演習場で訓練があるから気落ちしてただけだ」
隠すことでもないので素直にそう告げると、すっとサイファーの顔色が変わった。
「なに…?」
おもわずと言った風にサイファーの口から声が漏れた。
体の動きを止めたサイファーは、そのままじっと壁の一点を瞬きもせず凝視している。
何を考えているのかと俺もあいつを見つめていると、段々と眉間に皺が寄ってくる。
すると、急に足を抱え上げられた。
と同時に、サイファーがのし掛かかってくる。
そうして急に手荒くなった動きで腰を押しつけられた。
「まっ…!おい、もうちょっと優しくしてくれ…!」
俺の願いは聞き入れられぬまま、その晩は意識を飛ばして朝を迎えた。
翌日、演習場に学生達の声が響く。
引率と言っても、結局は現場で学生と共にバトルに明け暮れる羽目になる。
もちろん学生達よりは体力あるつもりだけど、やっぱ一日中バトルってのは結構キツい。しかも学生に事故が起こらないように注意しながらだから余計に神経使ったぜ。(俺そーいうの苦手なんだよなぁ)
ゆっくり休めるとこが当たって良かったぜ。(SeeDなんだし当然なんだけどな)
結局俺の心配を余所に、今回は個室を与えられた。それだけが救いだ。
身も心も疲れた体をシャワーで清めて、ベッドへとダイブする。
あー最高だぜ。
すると、覚えのある感覚が下肢に集まってくる。
今日は誰に遠慮することもないのだ。
俺は下着の中にそっと手を入れると、ゆるく立ち上がるそれを握って刺激を与えた。
いつもの要領で触っていくが、どうもノれない。気持ちよくないわけではないが、なんだか物足りない気がする。
色々触り方を変えてみるがやはり同じで、
結局事務的に擦って出すという作業になってしまった。
出し終わったものを処理して、ため息をつきながらベッドに潜り込む。
昨日サイファーと処理して出したから、感度が下がっているのだろうか。
そういえばあいつ途中から不機嫌だったよなと思い出す。
順を追って思い返してみるが、特に失礼なことはしていないはずだ。
そうして昨日の事を思い出していると、それに当てられたのか再び下腹に熱が集まってきた。
そっと手をやると、それはすっかり固くなっていて驚く。
そのままさっきのように触ると、体が震えるほど気持ちよかった。
昨晩サイファーに入れられながら自分で扱いたときの快感を思い出す。
まるで昨日の自分をトレースするようにそこを触ると、たまらなく気持ちいい。
そうしてその晩は、サイファーと体を合わせた夜を思いながら自身を慰め、最後を迎えた。
翌朝、無事一泊二日の演習が終わり、各自徒歩でガーデンへと帰還する。(帰還するまでが訓練なんだとさ)
残りあと半分くらいまで来たところで、後ろから親しげに声が掛けられた。
「やあ、ゼル!」
振り返ると、アーヴァインが片手を挙げてこちらに近寄ってくる。
そういえば今回はアーヴァインが参加してたっけ。演習開始前の全体ミーティングで見かけていたから、参加していた事は知っていた。
この演習はSeeD試験を受けるための単位の一つで、そういえばアーヴァインも試験を希望してたっけ。
「SeeD試験もうすぐだろ?大丈夫か?」
「まあなんとかね。僕、座学は結構得意なんだけど近接戦闘がね~」
「俺も遠距離戦闘苦手だったもんな~」
様々な技能を有するSeeDは、やっぱりなるのは大変で、俺も五分五分とか言われたもんだ。
その時、俺の前を歩いていた女子がアーヴァインの方を向いてキャーキャーと声を挙げた。
アーヴァインはそれに片手を挙げてにっこり笑って応えた。
こいつがガーデンの子達に人気あるのは知ってたけど(いつもすげえ声かけてるんだよ)、実際に見たのは初めてだ。
「あの子達、お前に気があるんじゃねーの?」
からかうように言ってみるが、アーヴァインは慣れたもののようだ。
「そうかもね~」
「意外だな。お前だったら女の子みんなとつき合うんだと思ってたぜ」
「僕今本命いるからね。セフレはいらないんだよ」
飛び出してきた言葉に、ちょっと動揺する。俺にはあんまり縁のない世界だ。
「セフレ…ってセックスフレンドって意味だよな?」
「そうだよ~」
「本命以外とつき合うのって、セフレなのか?」
「気持ち無いんでしょ?そういう子と体の関係持つのって、セフレっていうんじゃない?」
急に俺の心臓が早鐘を打ち出す。
なんだか身に覚えがある…気がする。
「…抜き合いの延長みたいのでも…そうなのか?」
「まあ、セフレだよね」
ショックだった。
アーヴァインから放たれた一言が俺に突き刺さる。
セックスフレンド。
まさか自分とサイファーがそうだったなんて。そんなつもり全然無かったのに。
ただ、気持ちいいし、あいつは意外とまじめで優しいし、終わった後なんだか幸せな気持ちになる。
そうだ。
最初は罪悪感から受け入れたサイファーは、今や居ないと寂しいと感じるまでになってしまっていたのだ。
これ以上になってはいけない。俺達は…セフレなのだ。
そこからはアーヴァインの話しも右から左で、あいつとこれからどうしたらいいかばかりが頭の中をぐるぐると回っていた。
そうして気がついた時にはガーデンへ帰還していた。
つづく
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