チキン調教師の朝は早い。

  • サイファー編続きです R18注意

    俺たちはいわゆる「お付き合い」を始めた。
    初めて寝たあの日以来、俺たちの距離はとたんに近くなった。
    毎朝一緒に朝食を取り、任務に就き、お互いの部屋に入り浸って、そして時折夜を共にして眠る。
    もちろん俺たちの性格が変わったわけじゃねぇ。
    意見がぶつかるときだってあるし、俺の皮肉が気に入らないと顔に出ていることも(口にもだが)しょっちゅうだ。
    だが、人の居ない隙を盗んで廊下でキスをしたり(人がいると嫌がりやがる)、抱きしめても腕を振り払われることもない。
    それどころか薄らと耳と頬を赤くして、こちらに腕をまわしてくる。
    こいつの気持ちが俺に向くなんてことは正直無いと思ってたからな。
    ガキのするような恋愛ごっこだが、こいつとなら構わないと思っちまう。

    そんな万事順調に進んでいるように見える俺たちの関係だが、やはり問題もある。
    夜の関係が、進まねぇ。
    あれから何度かベッドを共にする機会があった。(当然俺が作った)
    お互いにお互いを愛撫して、気持ちも体も熱を持ち、お互いが張りつめそうなほどに起立する。
    だがいざ挿入にもっていこうと思うと、ゼルは首を横に振っちまう。
    俺とするのが嫌ってわけじゃぁねぇのは、あのガチガチのモノを見りゃあ分かる。
    つまり、最初の時同様、これからも扱き合いで済ませてぇってのがあいつの意見なわけだ。
    正直気持ちは分からんでもない。最初に俺が焦った事もあって痛い思いをさせたからな。
    だが、俺は、それじゃあ足りねぇ。最後までしてぇ。
    といっても、ゼルの同意が無い以上は無理やりするしかない。
    それは、もっと恐ろしい結果を招くリスクがある。
    ーーーそれは、それだけは、嫌だ。

    つまりは、扱き合いで我慢するしかないのだ。
    頭の中では、イイところを散々責められて、俺に縋り付いて、腰を揺らめかせているゼルがちらつく。
    妄想だとわかっちゃいるが、魅惑的だ。
    俺は苛立ちを胸に燻らせながら、今日もまたあいつの隣で飯を食う。
    ーーーーー俺らしくねぇ。
    分かっちゃいるが、仕方ねぇ。
    ったく俺を振り回す天才だなこいつはよ。
    隣でうまそうにパンをほうばっているゼルを見て、俺は小さくため息をついた。


    ■■■

    その日は、一日中日差しが照りつける猛暑日で、普段はコートを羽織っている俺も、流石に上着を身に着ける気にはならなかった。
    本当はレザーの手袋も外したいくらいであったが、これが無いとガンブレードのグリップに影響するので、脱げないのがもどかしい。
    もうすぐガーデンに到着しようかというガーデン所有の車両の中で、この任務から帰ったら、夏用のグローブを新調するかと頭の隅に書きとめる。それにしてもあちぃな。
    そうしてようやく到着したガーデンのゲート入口で、偶然にも他の任務に就いていたゼルが帰ってくるところに出くわした。
    よっぽど暑かったのだろう、普段羽織っているレザーのジャンパーは着ておらず、胸元から肩の大きくあいたプロテクターのみを身に着けていた。

    「なんだ、あんたも今帰りかよ!」
    俺に気付いたゼルが、こちらに駆け寄ってくる。
    「ゼル、先行ってるぞ」という他の班員達に片手をあげて答えながら、俺の前にたどり着いた。
    「ティンバーのレジスタンス強硬派が暴走してさぁ」
    ガーデンに向けて歩き出した俺に続いて、ゼルが喋りながら隣を歩く。
    ゼルの首筋から一筋汗が滴る。首筋から鎖骨をたどり、そしてプロテクターに守られた胸元へと消えて行った。
    それだけじゃねぇ。強い日差しに、汗の滲む肌がキラキラと光っている。

    体の底から覚えのある衝動が湧き上がる。ごくりと生唾を飲み込んだ。
    ここで暴走していいのか?自身に問いかけて、なんとかその衝動を抑えこむ。
    そうして俺たちは、シャワーを浴びてから一緒に食事を取ろうと、一旦各々の部屋に戻った。
    しばらくして15時を回り、あとはフリーの時間であるゼルはすっかりラフな格好になって俺の前に姿を現した。
    薄手の黒いタンクトップはこいつのお気に入りのものだ。こいつの白い肌にくっきりと映えている。
    普段より丈の短いハーフパンツからは、形の良い脚が伸びている。
    普段は立ち上げている髪も、もうセットするのが面倒なのか下ろしたままだ。
    俺を見つけるや否や、駆け寄ってくるところが可愛いじゃねぇか。
    まだ少年が抜けきらない幼さに、たまらなく庇護欲を掻き立てられる。
    再び、衝動がむくりと持ち上がってくる。
    先ほどまで俺に話しかけていた分だけでは足りないのか、こいつは止まることなく俺に話を振っている。
    話題は主に今日のクライアントがいかに横暴だったかという愚痴のようだ。
    話の合間に、好物のホットドッグにかじりつくのも忘れない。
    せわしない食べ方をするせいで、口の周りにケチャップがついて彼の肌を汚してしまっている。
    見かねてそれを親指で拭ってやると、突然接近した俺に驚いたのか、ビクリと肩を震わせて、
    そうして耳まで真っ赤になってしまった。
    その仕草に俺も思わず食べかけていた鶏肉を噛み潰す。
    先ほどから燻っていた衝動を確実に自覚するが、それは咀嚼した鶏肉とともに無理やり流し込んだ。

    食事も方が付き、自然と寮へと足を運んでいると、俺の少し前を歩いていたゼルがおもむろに足を止めてこちらを振り返ってくる。
    どうしたのかと顔を向けると、視線を彷徨わせながら、何かを言いたそうにしている。
    「なんだ」
    ゼルの言葉を待つのもじれったい俺は、少し声を低めてそう問いかけた。
    「な、なぁ。この後、どうする?」
    俺が怒ったと思ったのか、伺うように俺の顔を覗き込んでくる。

    そうか、この後の予定を決めずにこっちに歩いてきちまったからな。(俺はこいつの部屋へ行く気満々だったが)
    ゼルの声色からまだ離れたくないという気持ちが滲んでおり、悪い気はしなかった。
    「行くぞ」
    そう言ってこいつの前を歩き出せば、どこへ行くのかという疑問を顔に貼りつかせたまま、つんのめりながら着いてくる。
    「テメェの部屋でいいだろ」
    そう言ってやれば、表情が一変し、音が付いたように顔を綻ばせて俺の隣へと滑り込んできた。

    部屋に着くと、丁度コイツの贔屓のバスケットチームが試合をする時間で、見事に試合観戦に突入してしまった。
    こいつは見た目に違わずスポーツが好きで、どの競技にも贔屓のチームがありお目当ての選手がいるのだ。
    スポーツ観戦なんて数えるくらいしかしたことねぇからな。俺にはただの玉入れごっこにしか見えねぇが、まぁこいつがはしゃいでんのは悪くねぇ。
    チームが点数を入れるたびにガッツポーズでこっちに飛びついてきやがる。
    そして歓声をあげて、今のプレイがどう凄いかなんていううんちくを得意げに俺に話している。
    俺がナニをこらえるのに必死になってるのがこいつには分からねぇんだろうな。畜生。
    我慢できなくなりそうになって、飲み物でも取ろうかと俺がソファから腰を上げると(高ランクのSeeDになるとソファ付のいい部屋に住めるんだぜ)どこ行っちまうんだよという目でこっちを見てくるからたちが悪い。
    「のど乾いただろ」
    そう言ってやれば、怒ったわけじゃないと安心したのだろう、「俺コーラ!」という威勢のいい声が響いた。
    備え付けの冷蔵庫から、ご所望のコーラとミネラルウォーターを掴むと、
    再び拷問のようなソファへと腰を下ろしたのだった。

    試合観戦も終わり、そのままのチャンネルで突入したニュース番組をボーっと眺めていた。
    今日ゼルが関与したであろう、ティンバーのレジスタンスの強硬派がテロを起こしただなんだとキャスターは一定の口調でニュースを読み上げている。当然、そこにSeeDの名前が出ることは無い。
    が、こいつもそこにいて、戦い、そして今日も命があった。そのことに、言い知れぬ気持ちが湧き上がる。
    それは感謝のようで、感動のようで、いやそんな綺麗なもんじゃねぇ。考えたくないが、無意識のうちに悟っている。
    いつかは、居なくなる時が。そう、死---…
    「う…んっ…」
    そこまで思い立ったとき、隣から静かな寝息が聞こえ始めた。
    先ほどまで、うつらうつらとしていたゼルが、俺の肩によっかかって本格的に寝入りだしたのだ。
    先ほどから俺を支配している嫌な気持ちを振り払おうと試みる。だが、追い詰められた心は、逆に
    今日何度も飲み込んだ衝動を簡単に引っ張り出した。これはいけない選択だ。だが、もう止められない。
    目の前の据え膳、食わねば損だ。
    俺は言ったぜゼル。「これからは遠慮無しでいく、犯されねぇよう気をつけろ」ってな。


    ■■■

    俺に寄り掛かる体を、そっとソファーへと押し倒す。
    まだ何もわかっていないこいつは、なされるがままだ。
    そうして、タンクトップをずりあげてその美しく括れる腹筋へとキスを落とす。
    そのむず痒さに、くぐもった声をあげて答える。
    そのまま胸までキスと落して、乳首を舐めあげると、気持ちいいのかぶるりと震えた。
    刺激の加わった突起は、ぷくりと膨れて、つんと立ち上がり自身を主張をしている。
    白人特有の白い肌に、濡れて光る濃いピンクのそれは淫靡すぎた。
    ずくりと下半身が重くなる。
    勢いよくハーフパンツと下着を脱がせると、流石に何かが起こっていることは理解したのだろう。
    むにゃむにゃと何かを口にしながら、ゼルが意識を覚醒させだした。
    だがもう遅い。
    ゼルのゆるく立ち上がるそこを、ぬるりと銜え込んだ。
    とたんに、ゼルがはじけるようにこちらを向いて、なにやらわなないている。
    だが辞める気なんて毛頭ねぇ。
    そのまま、音を立ててそこをしゃぶってやる。
    「あ、あ…あ…」
    寝起きの回らない頭に、この快感はたまんねぇだろ。
    括れをなぞり、裏筋を舐めあげてやれば、簡単だ。
    もうこんなになってやがるぜ。
    ゼルのソコはすっかり立ち上がって、サイファーの口一杯に膨れている。
    何度か舌だけで先端を舐めてやると、腰を揺らして俺の舌にそれを押し付けてくる。

    作戦通りすっかり快楽に身を浸しだしたゼルに、続きの許可を得るようにキスを仕掛けると、
    舌を絡めて答えてくる。
    キスに答えながら、俺も窮屈になった自身を解放した。
    飛び出すように現れたそれの硬度にこいつも少し驚いたようだったが、そっとそれを握って動かしにかかる。
    俺もこいつのを握って大きくスライドさせた。
    体をソファーに擦り付けて快感を逃すこいつの所作に局部が痛むほど興奮した。
    だが、これはいつもの「扱き合い」だ。
    俺のココの準備は整ってる。入れれる。もっと良くしてやれる。そうだろ?

    理性を衝動が打ち砕く。

    ゼルの下肢を持ち上げて、挿入するために体をぐっと近くに寄せた。
    そうして覆いかぶさるように上に乗ると、ゼルの穴に自身を擦り付ける。挿入の準備だ。
    だがゼルも俺のいつもと違う動きに気が付いた。
    そこに雄を擦り付けられて、入れる気だと理解したのだろう、急に身をよじって抵抗を始めた。
    そう来るだろうと思ってたぜ。
    俺はこいつの両手を絡げて、ソファーに押し付ける。
    「サイファー、やだ!…やだっ!」
    力で抵抗できなくなるや、首を振って俺を静止しにかかる。
    押し入ろうと力を込めるが、ゼルが後孔に力を込めているせいで、亀頭の半分がやっとだ
    俺も感情的になってつい声を荒げてしまう。
    「ふざけんなよ!そんなに嫌か!」
    抑え込んでいない方の腕で、未だ首を振って逃げようとするゼルの顔を鷲掴んだ。
    そうして無理やり視線を合わせて目の前で凄んでやる。
    「待って…くれ!」
    俺が押さえつけているせいでくぐもった声になっているが、確かにこいつはそう言った。
    「どういう意味だ!」
    興奮が覚めない俺は、ついつい吠えるよう攻め立ててしまう。
    「頼む、もうちょっと、時間が欲しい!」
    「それで何が変わるっつーんだ!」
    時間稼ぎかと更に凄んでみれば、こいつから意外な言葉が漏れ出てくる。
    「絶対、するから!俺から言うから!それまで、待ってくれ!」
    こいつは確かに「絶対する」と言ったんだ。確かにそう聞こえた。
    「絶対だな。自分から言ったんだ、言い逃れはできねぇぞ」
    「…わかってる。」
    確約を得て、少し落ち着いた俺は、ゼルから体を引いて肝心なところを問いただす。
    「それでいつだ。いつまで待ちゃあいいんだ」
    「わかんねぇ。でも大体1か月くらいって言ってたから」
    俺が引いたことでこいつも安心したのだろう、ソファにぐたりとしながらそう答えた。
    「言ってた?どういう意味だ」
    「な、なんでもない!とにかくそんくらいだ!」
    そう言って、フイっとそっぽを向いてしまう。だが、頬も耳も真っ赤になっているところを見ると、
    何やら恥ずかしかったようだ。
    俺は一言わかったと告げると、そのままゼルの下肢に再び手を伸ばした。
    言い合いをしていたせいで飛んでいたが、お互いに立ち上がらせたままだ。
    せっかくなら、二人で慰め合いたい。
    ゼルもその意味を理解したのか、再びこちらに手を伸ばしてくる。

    そうして、俺たちはいつもの「扱き合い」をしてその夜を過ごした。



    つづく



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    再びサイファーお預けになっちゃいました。
    この話の核心はサイファーがなぜこんなに我慢強いのかというところです笑
    目の前に惚れた奴がいて、自分の準備は万端なのにできないってのは
    堪えるだろうなぁと思います。


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