こいつの熱いからだに興奮する。揺れる金の髪の房にさえ。
俺たちは何度も口づけを交わした。
こいつからのまさかとも思える告白に、準備のできていなかった俺の心は動揺した。
あれは半年ほど前だろうか。ゼルと共にトラビアの任務についた俺は、膨大なモンスターとの交戦を余儀なくされていた。
凍えるような寒さの中、異常発生したというモンスターの討伐任務だった。
普段の俺ならば、嬉々としてその喧騒の中に身を投じただろう。
だがその日の俺は、前日までの他任務で一日中雨に降られながら1人で戦闘をこなし、しかも強くなった雨脚のせいで足止めを食いガーデンに戻ってきたのは朝の4時を回ったころだった。
その翌日に、真冬のトラビアでの討伐任務ときた。
体が熱く熱を持ち、視界がかすむ。寝不足の頭は何も考えられず、指示されたことをこなすので精いっぱいだ。
普段であれば、班員のゼルでもからかって遊ぶところだが、今日ばかりはそんな余裕はとてもじゃないが無い。
だが、リーダーに自身の不調を伝えるのも癪だ。
すぐれない体のまま、俺は他のSeeDたちと同じようにし散開し、あふれるモンスターを叩き切っている。
頭がぐらぐらする。情けないったらねぇぜ。
その時、視界の隅にゲイラが飛び込んでくるのが見えた。だが、思うように動かない体は、雪に足を取られ動けない。
俺は腹部への強烈な一撃を覚悟した。
俺の目の前が真っ赤に染まった。
目の前に、一人の男が躍り出たのだ。真っ赤なダウンを身にまとっている。
立ち上げた金の髪は、吹雪のせいですっかりセットが崩れてしまっている。
ガンブレードを支えにして、立った体制をようやく保つ俺に対して、そいつは言い放った。
「あんたが苦戦してるなんてめずらしいじゃん!」
そう言うと、俺の方を顔だけで振り返る。
「俺んとこ終わっちゃったからさ。ちょっとこっちもやらしてくれよ」
食い殺してやると言わんばかりの好戦的な笑みだった。ぼやける視界に、その笑みだけはなぜかくっきりと映った。
普段は人懐っこくて、愛嬌のある顔立ちが、俺の知らない顔を見せた。
「好きにしろ」
そういうので精いっぱいだった。動揺していた。
肉体的にも追い詰められ、そうして精神的な動揺までもが加わった。
結局、モンスターのほとんどをゼルが殺った。
俺は、ただゼルを見ていた。
野営地に戻ると、ゼルが話しかけてくる。
今日は珍しくお互いに平和な関係を築いているからだろうか。(俺の体調のせいだが)
「なんか暴れたりなくてよ。サンキューな!」
譲ってくれたんだろ?と普段の笑顔をのぞかせる。
勘違いも甚だしいが、まぁいいと思える何かがあった。
この俺が、獲物を横取りされて黙っていられるなんてな。
これがスコールだったらどうだろうか。俺のプライドは刺激されるばかりで、落としどころなんて見つかりやしない。
体調なんて関係あるか。スコールには、負けられない。
普段のように食って掛かってこないからだろうか、その間にも俺に話しかける言葉は止まらなかった。
ああ、とか、そうだなというような適当な相槌を打ち続けていた。
またあの顔を見れるかもしれないという期待があった。いや、あれ以外にももっと別の顔があるのかもしれない。
話すたびに表情が変わるこいつの顔を…
ただ、ゼルを見ていた。
今もそうだ。こいつの新しい顔を見ている。欲情した獣の顔だ。
キスをするたびに理性という服を脱ぎ、俺を誘惑しにかかる。魔性の獣か。
俺は、ゼルをこいつのベッドへと押し倒した。
抵抗はほとんどなかった。
ただ、「シャワー…」とだけ小さくこぼしてこちらを見上げた。
「必要ない」
それだけ言って、強い視線で納得させる。
髪を掻き揚げ、頬をさすり、そうして服の中へと手を差し入れる。
時折キスを仕掛けるが、激しいそれにはまだ慣れないのか、苦しそうにしては肩で息をしている。
その初々しい表情に優越感を覚える。まだ誰のものにもなっていないこの男は、俺のものなのだ。
男を抱くのは初めてだったが、関係ない。女の経験ならある。喜ばせる術も知っている。
それに倣い、纏っている服を順に脱がせ、胸の突起を舐めにかかる。
「あっ」
かすかな反応をみせるその個所をゆっくり責める。
ゼルはもどかしいのか、体を震わせて、俺の腕を強く握ってしまっている。
体をさすりながら、そのまま首元まで舐めあげると、ぎゅっと目をつぶり首を反らしてのど元を晒した。
その首にキスを落としながら、下肢に手を伸ばす。
ゆったりと撫で上げると、そこはすでに力を持ち始めていて容易く手の中に納まった。
その形を確かめるように手を動かすと、直接的な刺激が気持ちいいのか目を閉じたまま感覚を追いかけている。
あの美しい青い瞳がどうしても見たくなる。
「俺を見ろ」
耳元でそう命令すると恐る恐るというように瞼をあけてこちらをじっと見つめてくる。
水底を浚ったような美しい青。
ーーーたまらねぇ。
体中を熱い血液が駆け巡るのが分かる。興奮で呼吸が荒くなる。
これからこの体に侵入するのだと思うと体が沸き立つ。
たまらなくなって、つい事を急いでしまいそうになる。
何度も口を吸って、肌をたどり、性器を扱く。
ゼルもやられっぱなしは悔しいのか、こちらの下肢に手を伸ばして必死に俺のそれを刺激してくる。
手早く俺も衣類を取り去り、再び彼の上に覆いかぶさった。
そうするうちに、ゼルの体もしっとり汗ばんでなじみ、肌の薄い部分がほのかに赤く色づいている。
俺のも挿入できる硬度を十分に保っており、先も濡れてきて具合がいい。
そろそろ我慢も限界だ。頃合いだろうと、仰向けに横たわるゼルの足を腕にかけ、体を寄せる。
彼の足を開き、何が始まるのかと戸惑いと不安をみせるゼルの顔を見た。
俺の熱いものがそこに押し当てられて、意味を悟ったのだろう。覚悟を決めたようにキュッと瞳を閉じると、
浅く呼吸を繰り返している。
それを了解の意と捉え、グッと力を入れて、ゼルの中に侵入を開始する。
だが、ゼルが苦しそうに顔を背けて、歯を食いしばっている。
亀頭の半分も入らぬうちに、ゼルの孔はピンと引き攣れて、限界だと震えている。
それでもなんとかしたいと気持ちは焦り、一度腰を引いては押し付けて挿入を図る動作を何度も繰り返す。
俺のソコも期待にうち震えて濡れて光り、しなっている。なんとかゼルの中に入りたいと訴えている。
挿入しようと腰に力を入れて押し付けるたびに、ゼルから苦しそうな声が漏れる。
先ほどまでガチガチに立ち上がっていたゼルのモノも、痛みからかすっかり萎えてしまっている。
「…ゼル」
彼の閉じた瞳から、涙がこぼれるのが見えた。
俺は、ゼルの瞼にそっとキスを落として、その涙を舌でぬぐった。
こんなのは俺がしたかったセックスじゃねぇ。
おれはゼルからそっと腰を引いた。
ゼルがどうしたのかとこちらをゆっくりと見つめる。
俺はゆっくり首を振って、まだ恐怖から小刻みに震えるゼルを強く抱きしめた。
結局その日は契ることができず、俺たちはお互いを扱き合ってことを収めた。
こいつに扱いてもらうなんて想像の中だけだと思ってたからな。それはそれで興奮した。
眉を寄せてイく顔も、そのエロい声も、俺の耳にしっかりと残ってる。
が、俺がしたいのはそういうペッティングじゃねぇんだ。
こいつをガンガンよがらせて、俺にすがりつかせて、快楽の底で一つになるようなセックスが、してぇ。
どうしたものかと隣で眠るゼルを見て、頭を抱えた。
女を抱くのとは違う。
そう突きつけられた気がした。
つづく
サイファーの方が書きやすいのは、私もゼル可愛い目線でみてるからでしょうかね笑
だいたいのBL小説って、初めて行為に及ぼうとして、うまくいって、しかも受けがモロ感っていうのが多いと思うのですが(私も大好きです)、実際はそんなうまくいかないだろうなぁというのを書きたかった話です。
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拍手ありがとうございます!
引き続き小話がんばります!ありがとうございました~!
久しぶりにサイゼル~のコメントありがとうございます。
以前もとのことでありがとうございます!やってきた甲斐があります。
私もそうなのですが、サイゼルは出戻り組が多いように感じております。
まだまだ書いてないネタが沢山あるので、二人の萌えを存分にニヤニヤしつつ見守ってくださいませ!コメントありがとうございました!