チキン調教師の朝は早い。

  • その後のお話続き R-18注意!

    眠れぬ夜を過ごした俺は、ずっと頭に焼きついた昨晩のサイファーについて思案していた。
    彼は一体何をしたかったのか。当然ただベッドで寝たかったわけではないだろう。
    そのくらいは俺にもわかる。しかも、彼の性器が固くなっていたのを感じた。
    でも、彼の真意が分からない。
    そうして思い悩み、ふと時計を見て気付く。
    朝食を共に取るため、サイファーが迎えに来る時間が迫っていたのだ。
    昨晩一体何をしていたのかと問い詰めたい気持ちと、触れてはいけないという気持ちがせめぎ合う。
    戦々恐々としながら、普段彼が迎えに来る時間を迎えてしまった。
    そわそわと、ベッドに腰掛けながら彼を待つ。なんて声を掛けたらいいんだろう。
    いや、普段通り、普段通りだと自分に必死に声を掛けて平静を保つ。

    しかし、いくら待っても一向に迎えには来なかった。
    何かあったのだろうか…?昨晩のせいだろうか…?
    も、もしかして起きてたのがバレてたとか…?

    不安になりながらも、仕方がないので久しぶりに一人で食堂まで下りていく。
    サイファーが右側にいない事に、違和感を感じる。
    普段ならどうでもいいような事や、任務の事(秘匿事項は話してないぞ!)なんかを話しながら移動しているとあっという間に着いちまうのに、今日はなんだかやけに食堂が遠く感じた。

    食堂に着くと、そこにはスコールとアーヴァインが居て、俺に気付いたアーヴァインがこちらに向かって手を振ってきた。
    食事を受け取って彼らのテーブルに向かうと、遠慮もなく空いている椅子にドカッと腰掛けた。
    気心の知れた間柄の友人たちとの食事は、本当に楽しい。
    辛い任務の愚痴もあれば、スコールにリノアの近状を聞いたり、最近キスティスがちょっと厳しいことまで話題に上り、会話は大いに盛り上がった。
    その時、アーヴァインがそういえばと前置きして、「サイファーはどうしたの?一人で朝食取るの珍しいよね~」とゼルへと視線を投げる。
    俺はずっと意識していた名前に一瞬ビクリと反応しちまったけど、それを必死でごまかすように「わかんねぇ。普段なら迎えに来るんだけどよ。」と肩をすくめてアーヴァインに答えた。
    「サイファーならガルバディアでの警護の任務だぞ。4日間のな」
    スコールはそう言葉をはさんで、すくっていたコンソメスープを口に運んだ。
    スコールは指揮官という立場上、皆の仕事の管理もしているからそれを知っていたのだろう。
    「そっか…」
    それを聞いた俺は、ほっとしたような、さみしいような不思議な感覚に襲われた。
    それならそうと言っておいてくれればと思ったが、確かにいちいち俺に言う義理はないのだ。
    俺たちはただの『友達』だ。もし風神や雷神のような『親友』なら、対応も違ったのだろうか…?

    友達と言えば、昨晩のサイファーについてこの頼れる友人たちに相談してみたらどうだろうか。
    でも、何と説明したらいいだろうか?
    寝ている上に伸し掛かられて、ぐいぐいと下半身を押されましたとでも言うのか?(しかも勃ってた)
    意味が分からなさすぎる…。
    それを聞いたスコールとアーヴァインが顔を見合わせて、こちらを呆れた顔で見るのがありありと想像できてしまった。

    その後は楽しい食事のはずが、急にサイファーの事ばかりが頭を回ってしまい、俺は普段の半分も飯が食えなくて、2人に体調が悪いんじゃないかと疑われた。


    結局その日は一日中ぐるぐるとサイファーの行動の意味について考えて一日が終わった。
    一緒に作業をしていた、ただでさえ最近厳しいキスティスが、そんな具合の俺を見逃すわけもなく、
    ボーっとしていたペナルティとして、古い書架の整理まで申し付けられてしまった。
    俺はもう今日は仕事にならないと判断して、書架の整理は明日に回して部屋へと戻って体を休めた。
    なんだか気疲れしちまったみたいだ。俺らしくもないとため息をつく。
    今日も眠気は来ないかと心配したけど、睡眠不足と気を張って疲れた体は、思いのほか心地よい睡眠へと誘ってくれた。

    翌朝、俺はスッキリと起きた体で普段の時間通り身支度を済ませる。
    そうしてチラチラと時計を見て、無意識にサイファーを待っている自分に気付いてガックリと肩を落とす。俺ってマジで鳥頭なのかも…。習慣ってのは本当に怖い。
    あいつは今日も泊りがけの警護の任務中のはずだ。
    俺も今日は夕方ころまではSeeD候補生を連れて野外演習を行わなければならない。
    そうして慌ただしく部屋を出て行き、ようやく演習が終わって部屋に戻れば17時を回った時間になっていた。
    とはいえ、候補生に上がったばかりで動きが拙い者が何人もいたこともあり、先ほどまで彼らの面倒を見るのに忙しくて、昨日まで頭を回っていたサイファーのことを一時的にでも忘れることが出来たのは幸運だった。
    「もうこんな時間か。早く片付けに行かないとキスティからお小言もらっちまう」
    俺は急いでシャワーを浴びると、軽くふいた髪もそのままに図書室へと急いだ。

    ガーデンには図書室があるけど、普段利用しない資料や本を置いている書架が図書室の別室にあって、そこには図書委員くらいしか出入りしないから、ちょっと暗くて、人気が無くて、俺はあんまり好きじゃない場所だったりするんだ。
    現に俺も、たまーに報告書の資料で使ったりするだけで、数回しか入ったことはない。
    本当は図書委員が整理するのがいいんだろうけど、彼女たちはおしゃべりしたり、お菓子を食べるのがもっぱらの仕事らしく(三つ編みの子くらいしか俺も知らねえけどさ)、ここは結構ほったらかしになってるみたいでキスティス達のいる本部に、ちょくちょく整理してほしいってクレームが入ってたみたいだ。
    というわけで、俺にお鉢がまわって来たってことなんだけどさ…。
    これが結構、広い!しかもあちこちに棚があってちょっとした迷路みたいになっちまってる。
    とりあえず、適当に積みあがってる本を、タイトル順に整理していく作業を黙々とこなしていく。

    どのくらい時間が経っただろうか。
    奥の込み入った棚を整理しているときに、入口から人が入ってくる気配がした。
    俺はどうせ資料を取りに来たSeeDか図書委員だろうと思ってそのまま作業を続けていたが、どうも1人ではないようで、小さな話し声が聞こえてくる。
    声からして、男二人のようだ。
    しばらくすれば居なくなるだろうと踏んでいたのだが一向に気配は消えず、俺は何事かと棚のふちから顔をのぞかせて驚愕した。
    体格の立派な、ダークブラウンの髪の青年と、先の青年よりも小柄な、明るいブラウンの髪の少年が書架にもたれつつ、キスをしていたのだ。
    お互いの体に手をまわして、顔の角度を何度も変えて口を合わせている。
    時折、キスの合間に吐息が漏れるのが聞こえてくる。
    俺は思いも寄らない展開に固まってしまい、視線を逸らすことも忘れて彼らを見つめてしまう。
    運よく俺の居るところは書架に囲まれていて暗く、おそらくあちらからは見えないだろう。
    まだ俺が衝撃から立ち直れないうちに、既に彼らはお互いの衣服の中に手を差し入れだしている。

    彼らは、何をしているんだ…?
    いや、分かっている。キスしてるし、ハグもしている。
    でも、男同士だ。
    つまり彼らはゲイで(一応そういう人たちがいるってのは知ってる)、ここで逢瀬をしているってことだ。
    男同士でも、カップルならば、キスもするしハグもする、そうしてそれ以上もするということに初めて思い至る。
    しかし知識ではわかっていても、心がついていかない。
    初めて見た男性同士のキスに、俺は食い入るように見入ってしまった。
    2人は舌を絡ませて、口を食む様に何度もキスを繰り返している。
    そんな濃厚なキスに、彼女がいた事のない俺はごくりと唾をのむ。
    男同士のキスなんてもっと気持ち悪いものかと思ったけど、嫌悪感がわいてこない自分に驚いた。
    それどころか、むしろ俺はなんだかあのキスの感覚を想像できるのだ。
    そうして気付いてしまった。
    俺、サイファーとしたことあるんじゃん。
    あの呼吸を奪いに行くようなキスを、したことがあるのだ。
    そこに思い至ると、彼の広い背中に腕をまわして気持ちよさそうにキスを享受している少年が、なぜか自分とダブって見えてしまい、俺は急いで首を振ってその恥ずかしい想像を振り払った。

    そうするうちにも、体格の良い青年は、少年の下半身へと手をまわして、そこを揉む様に刺激している。
    少年は小さく声をあげて、青年にしがみついてはキスをねだっている。
    青年の堀の深く引き締まった顔立ちは男前で、その眉間に皺を寄せた鋭い目元はサイファーを思い起こさせた。
    いやいやいや俺何考えてんだよ!
    知らず知らずのうちにサイファーを思い出してしまう自分が恥ずかしい。
    青年は少年の下肢の衣類を取り去ると、少年の体を反転させて書架へと押し付けた。
    少年の立ち上げた髪が棚にあたってくしゃりと乱れる。(あいつも前髪を立ててるヘアスタイルだ)
    そうして青年も自身の下肢をくつろげると、中から隆起したそれが飛び出してくる。
    その生々しさに俺はそっと息をつめた。
    青年が少年の臀部に指を這わせて、そうして指を埋め込んで動かしている。
    少年は眉尻を下げながらも、その動きに耐えているようだ。その首筋に、青年が息を荒げつつ口を寄せている。次第に二人の息が上がっているのがここからでもわかった。
    これから何が始まるのか、知っているはずなのに、俺の頭は真っ白になってしまって役に立たない。
    少年からぬるりと指が抜かれると、そこに十分に濡れていきり立ったものが押し当てられる。
    少年がそれを理解して、クッと息を止めるのが分かった。そっと腰を突き出して、彼の挿入を待ちわびている。
    俺は目が離せなかった。
    青年はグッと力を入れて、ゆっくりと彼の中へ自身を埋め込んだ。少年が細い声をあげてその衝撃にあえぐ。
    腰がつくまで侵入を果たすと、青年はその体格差から圧し掛かるように、少年の体に腕をまわして抱きしめた。お互いの名前を、吐息交じりに呼び合って、呼吸を合わせている。

    そうして、青年がゆっくりと腰を揺らしだした。
    少年の尻に腰を押し付けるような大きなストロークが繰り返される。
    その動きに、俺の頭にあの光景がフラッシュバックする。
    サイファーの動きがだんだんと早いものになっていく。息が荒くなる。挿入される俺も甘い声をあげて、腰を揺らして彼を煽る。
    ちがう!彼らはサイファーじゃない、俺じゃない!
    自然と彼らを自分たちに重ねる自分に驚愕した。

    そうして、俺はようやくあの時のサイファーの行為を理解した。


    あいつは、おれに、欲情してたんだ。


    つづく


    とりあえずキリのいいとこまで行った!
    他のカップルの行為を見るのって衝撃的だし、鈍いゼルにはいい刺激だろうと思ってやってしまったぜ!
    めっちゃ萌える~!
    この後はサイファーとの邂逅編です。
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