チキン調教師の朝は早い。

  • 小話続き

    ーーー

    辺りはしん・・・としていた。頭がくらくらして、失神していた事にすぐに気が付いた。
    辺りを見渡すと、討伐されたモンスターの死骸が向こうの方に転がっている。無事に任務は終わったのか。ほっとして、班員を呼ぼうと大声を出した時に気付いた。
    なぜか洞窟内で俺の声は一切反響しなかった。
    俺の声は俺自身にすら・・・聞こえなかったのだ。

    その時、携帯していた時計が目前に転がった。
    その時計を拾おうと腕を伸ばしたときに、おかしな事に気が付いた。
    腕がなかった。いや、腕だけではない。体が無いのだ。
    自分の体が見えない。地面が透けている。
    そんなバカなと思って自分の体を何度見回しても、そこに自分の肉体を見つけることはできなかったのだ。

    俺はどうなってしまったんだ。いや、本当は薄々分かっていた。
    でもまだ認めたくはなかった。現に俺の意識はここにある。
    他の班員の姿も見あたらない。
    ともかく、ガーデンに戻ろう。話はそれからだ。
    そうキリをつけると、俺はゆっくりと立ち上がった。


    拾いそびれた時計は、戦闘の中で破損したのか、ひび割れ、そして時を止めていた。


    ーーーーー

    俺は萎える心を奮い立たせてガーデンへとたどり着いた。
    ガーデンに戻る間に一つ気付いたことと言えば、俺の足はすっかり無くなってしまったらしいということだ。
    歩こうとすれば前には進むものの、地面を踏みしめているという感覚がまるでない。宙に浮いているか、水の中を進んでいるかといった具合だ。
    とにかく、自分の部屋に戻ろう。そして落ち着いて考えるんだ。
    俺の頭にあるのはそれだけだった。それ以外のことを考えようとすると、いけない結論に達してしまいそうだった。

    ガーデンに足を踏み入れると、生徒たちが少しざわついているようだった。
    俺は思い切ってなにがあったのかと、案内板のそばで友人と話している学生に話しかけてみた。
    しかし、学生は少しもこちらを見ることもなく、途絶えず友人と話し続けている。

    そのほか何人かにも話しかけてみたが、結果は同じだった。
    ーー俺のことが見えないのだ。

    続きます
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