チキン調教師の朝は早い。

  • ようやくまとまりました…!

    こんにちは~!
    早速ですが小話続きです!





    それからの俺はむちゃくちゃ頑張った。
    何を頑張ったかって?そりゃ勉強に決まってる。
    12月に行われる教員試験は、SeeD試験より難しい試験だ。あの優秀なキスティスでもSeeD試験よりずっと後に合格してるんだぜ。
    履修の範囲が広くて、沢山勉強しなくちゃいけない。
    オレSeeD試験でもぶっちゃけ筆記はかなりギリギリだったから、それより大変となるとかなりの範囲を勉強しなおさなくちゃならない。
    そんなこんなで、俺の一日のスケジュールの中に、『試験勉強』っていうのが入ったわけだ。
    任務から帰ってきたらちょっと休憩して、飯食って勉強をする。
    そんな日程が1週間くらい続いて、俺はサイファーと最近全然会えなくなってしまったことに気付いた。
    今まではサイファーと過ごしていた任務後の時間がほとんどなくなってしまったんだ。
    かくゆうサイファーも、時折目にするとイライラしてるし、時間作れないかってメールがしょっちゅう入ってくる。
    俺だって会いたいに決まってんだろ。
    でも勉強もしなきゃ間に合わない。

    俺は考えた末、サイファーの部屋へと参考書をもって突撃した。

    「なあ、あんたの部屋で勉強してもいいか?」

    部屋に入るなりそう言うと、ベッドで寝転がっていたサイファーはむくりと起き上ると、早く入ってこいと言って俺にデスクを与えてくれたんだ。


    「だーかーら、なんでてめえはいっつも同じとこで間違えんだよ!マジで鳥頭か」

    「あんだと…!だってこれはさっきのとはちげえじゃん!」

    「良く見ろ!使う公式は一緒だろうが!なんでてめえがSeeDに合格できたか全く理解できねえぜ」

    「うるせえなあ!俺は一夜漬け派なの!」

    サイファーが前のめりになって参考書を叩くのをぐっと堪える。
    最初の頃は静かにサイファーの机で勉強してたはずなんだよな。
    だけど、問題が結構難しくって(しかも俺も結構解き方忘れてて)あっちこっちで詰まってうんうんいってたんだ。
    そうしたら、ベッドで静かに本を読んでたサイファーが、ゆっくりこちらに近寄ると、後ろから俺の問題集をじっとのぞき込んだ。
    そうして俺が詰まってるところを理解したのか、近くのペンを手に取って、俺の肩越しにサラサラと回答のヒントを書き込んできたんだ。

    「え?あんた解けるのか?」

    俺が驚いて、振り返ってそういうと、

    「あ?このくらいできて当然だろうが」

    とムカつく答えが返ってきた。(ちょっとニヤニヤもしてた)
    それからというもの、サイファーは俺が勉強を始めると、近くの椅子を手に取って一緒に問題を見てくれるようになったんだ。
    で、それ以来俺が分からないところを叱咤しながら教えてくれるっていうわけ。
    良く考えたら、コイツは15の頃からSeeD試験の常連で、成績いいンだよなあ。
    サイファーが実技に落ちたって話は毎年耳に入ってきてて、その度に懲りねえなあって思ってたけど、それってつまり筆記はいつもクリアしてたってことだもんなあ。

    なんだかんだ言って、今でも実技もスコールと渡り合うくらいすげえし、頭もいいしで優秀なんだよな…とまだ怒りながら問題集を指さして説明しているサイファーを盗み見る。
    真剣な表情で数字をにらむサイファーは格好良くて、胸が熱くなる。
    だが次の瞬間、眉間に皺を寄せた顔がこちらを向いた。

    「おいてめえ聞いてんのか?次はこっちだ、同じ公式使うからやってみろ!集中しやがれ!」

    「わりいわりい、ええと、この問題な!」

    俺はわざとらしく誤魔化しながら、それでもサイファーと過ごせる時間を持てることが嬉しかった。



    そんな俺たちの勉強会は、毎日のように続いた。
    教科も数学から化学、魔法、歴史、地理、モンスターの生態…と万遍なく学んでいく。
    時には俺の部屋で、図書室で。同じ任務が重なれば、任務の待機時間にも参考書を持ち込んで共に時間を共有した。
    限られた時間は、残り少ないと分かっている。
    でも現実を直視したくなくて、サイファーとの賑やかな勉強会に没頭した。


    気付けば、季節は秋に移り変わろうとしていた。

    「まみむめも!ゼル、全然連絡くれないじゃん~!」

    ガーデンのエントランスで偶然出会ったセルフィが声を掛けてきた。
    実は最近セルフィからちょくちょくと連絡が入ってきていたのだ。

    メールの内容はこうだ。

    『やっほー!セルフィバンド聞きに来るよね?サイファーはんちょも一緒かな?特等席とっとくけどどうする?』

    一週間前に送られてきたこのメールは、サイファーの予定が分からずまだ返信できないでいる。

    送られてきた理由はもうじき学園祭があるからだ。
    前年に戦いの最中行われた学園祭は大成功し、今年もF.H.で行われることになっている。
    街の人も楽しみにしているという話だ。(もしかしたら舞台を作るのが楽しいだけなのかもしれないけどな)
    昨年は俺も協力したセルフィバンドは、今年は俺たちが忙しかった事と、新しいメンバーがかなり集まったことで違うメンツでやるということをセルフィから聞いている。
    そうして絶対聞きに来てね、と両手を握られてしまえば断れはしない。
    だからメールが来たときにはすぐにでも『2人分いい位置頼むぜ』と返信するつもりだった。

    そういう訳で念のためにサイファーの予定を確認しようと、勉強の合間に「学園祭見に行くだろ?」と聞いてみたんだ。

    「F.H.に行くなら行きたいところがある。見に行きたいなら一人で行っていいぞ」

    サイファーは俺の参考書を読みながら、顔も上げずにそう答えた。
    思いがけない答えに、俺は上手く反応できなかった。
    どうにか動いた口で、そか、と緩い返事をすると、再び問題集に顔を落とした。
    てっきり俺と一緒なら行くと言うとばかり思っていたのに。もちろん嫌みの一つや二つはあるだろうけど。
    ようやく回り始めた頭で、どこに行くのか、なぜ一緒にいかないのかを聞こうと顔を上げた。
    だが同じタイミングでサイファーから声がかけられた。

    「おい、ここは分かってるよな?」

    そう言って、急に参考書と体をこちらに寄せてくる。
    その体温と息使いに胸が高鳴って、お、おうと裏返った声がでてしまう。
    ちょっとしたことせ簡単に熱くなる俺の心に、やっぱコイツのことが好きなんだと実感する。

    結局そのあともタイミングを逸してしまい、大事なことを聞くことは出来なかった。



    だがそんな事情も知らず、無情にもセルフィが駆け寄ってくる。

    「わりいな、結構バタバタしてて、全然返信できなくてよ」

    頭を掻いてそうごまかした。セルフィも俺が忙しいのは知ってるからか(ほんとにSeeDは忙しいんだぜ)いいよ~と軽い返事を返してくる。

    「今年のセルフィバンドはね、去年見て感動した!って人がいっぱいメンバーに来てくれて凄くいい感じなんだよ!」

    セルフィが興奮気味に話し出す。

    「今年はすごい上手いボーカルもいるからね。聞くと超感動するよ~!あ、見に来るんよね?」

    そう小首をかしげて聞いてくる。
    セルフィの全く疑うことなくこちらを見つめる視線が痛い。

    「お、おう。もちろん行くぜ」

    「おっけ~!じゃあ二人分いい位置取っとくからね!楽しみにしててね~」

    セルフィは俺が慌てて答えたそれを、当然サイファーと来ると思ったのだろう。
    俺の肩を両手でバンバンと叩くと、サイファーに宜しく~と言いながらまた走って行ってしまった。

    俺はそれに片手を挙げて答えると、どーするかなとその手をゆっくり下ろした。




    □□□


    学園祭当日、浮足立つガーデンでもサイファーはいつもの通りだった。
    普段はバラム周辺を中心に移動しているガーデンも、前日にはきちんとF.H.に到着した。
    この日ばかりは、SeeDも前日から休日になるから、俺たちは久しぶりにゆっくりとした朝を迎えることができた。
    身支度を整えて、もはやブランチにちかい朝食を共にとる。
    暖かい食事が、疲れた体に染みわたる。
    俺が最後のコーンスープに口を付けていると、サイファーは出かけてくると言って食堂の椅子から立ち上がった。
    分かってたことだけど、俺はぼーっとしてしまって、ゆるりと食堂を後にするサイファーの背中をただただ見つめるだけだった。
    どこに行くつもりなのか。オレの知らないサイファーに心の奥がザワザワする。
    学園祭は夕方からだから、開始までまだ時間がある。
    気になるんなら、行くしかねえよな。
    俺はコーンスープをぐいっと急いで飲み干すと、走ってサイファーの後を追った。


    久しぶりにF.H.の街に降り立つ。
    前回来たときは2年近く前だからだいぶ様変わりしてるかと思いきや、以前とほとんどかわりなく俺の知った町並みだった。
    急いで辺りを見回すが、もうすでにサイファーの姿は見えない。
    その代りに、多くのガーデン生が街を闊歩していた。

    「サイファー?ああ、あっちに行くのを見たけど」

    こういう時、探している人物が有名人だと便利だと実感する。
    俺はガーデン生にサイファーの居所を訪ねながら、そのあと追うことにした。


    「ここかよ…」

    たどり着いたのは、駅長の家だった。
    どうしてこんなところに用があるのか、思い当たる節が無い。
    イヤな胸騒ぎに心臓が早鐘を打つ。
    流石に中には入れないので、外から窓を覗いて様子を探ることにした。

    駅長と奥さん、そしてサイファーが立って話をしているのが見える。

    しばらく覗いていると、駅長がうんうんと頷いて、サイファーが小さく頭を下げるのがみえた。
    何を話しているのか声は聞こえないが、話は和やかに進んでいるようだ。

    もしかして、と以前考えた思考がよぎる。

    ガーデンを出たら、サイファーはF.H.に腰を落ち着ける気なんじゃないだろうか。
    今日はその相談にきたというのなら筋が通る。
    ここは流れ者を拒んだりはしない。優秀なサイファーが落ち着くには一番いい場所なのかもしれない。
    そう思ったら、急に胸がつかえて苦しくなる。
    本当ならサイファーを迎え入れてくれる場所があることを喜ぶべきなのに。

    俺は家から離れて、ミラーパネルの上に敷かれた通路を駆け上った。
    何も考えたくなくてあてもなく走り続けた。
    そうしてだんだんと駆け足は緩くなり、最後にはとぼとぼと歩く速度になり、ここがどこかも確認することなく近くの腰を下ろせそうな場所に座り込む。
    時間だけが、ゆっくりと流れていく。
    考えなきゃいけないのに、考えたくない。
    まだ現実を直視したくない。

    ただ、遠くを見つめながらぼおっとそこに座り続けた。

    どのくらいたっただろうか。

    「ここでなにしてやがる。学園祭に行かなかったのか」

    そう、聞き覚えのある声が頭上から聞こえた。
    まだ遠くを見たままゆっくりと顔をあげると、視点が合わずぼやけたサイファーが目の前に立っていた。

    「!」

    急いで立ち上がって辺りを見回すと、どうやら駅前広場を超えたところにある線路の行き止まりまで来てしまったらしい。
    辺りもすっかり暗くなっていて、気が付けば学園祭のバンド音楽も聞こえてきている。

    「行きそびれちまった…」

    ぽつりとそう言って、力なく元の場所へと腰かける。
    すると、サイファーも隣にのそり、と腰かけてきた。
    どうしたのかとそちらを見ると、サイファーが真っ直ぐ暗闇を見つめながら口を開いた。

    「問題ない。ここから見える」

    そう言って、遠くを指さした。
    俺はそれにつられてサイファーの指の先に視線を遣ると、スポットライトが煌めいているのが見えた。
    ステージの上には楽器を持った数人が、激しい演奏をしながら縦横無尽に走り回っている。
    去年の学園祭より舞台の規模が大きくなっているのをみて、セルフィの頑張りに頬がゆるむ。

    「特等席だな」

    サイファーがそう言って、俺の肩に腕を回してくる。
    思いの外、力強いそれに動揺する。

    「それで、ここで何してやがったんだ?」

    舞台から響く軽快な音楽を耳にしながら、サイファーが再び問いかける。

    「アンタは何してたんだよ」

    嬉しい気持ちと、非難したい気持ちが交錯してちょっと棘のある言い方になってしまった。
    答えは分かっているけども。

    「……挨拶にな」

    サイファーはまっすぐステージを見ながら、静かにそう答えた。
    分かっていたことだったけど、ショックだった。
    やはりサイファーはここに世話になるつもりなのだ。
    その為に、各所を回っていたのだろう。
    サイファーは、歩き出したのだ。

    その時、舞台の方からマイクを通して聞きなれた声が聞こえてきた。

    「それでは紹介しまーす!ボーカルはアンジェラ!」

    セルフィだ。遠くでバンドのメンバーを紹介する声が聞こえる

    軽快なピアノの音が響く。このイントロはEyes On Meだ。
    それに続いて、伸びの良い美しい歌声が夜空に響き渡る。


    その甘い歌声にサイファーと付き合い始めた時の事を思い出した。
    初めてサイファーの気持ちを聞いたとき、サイファーはまるで騎士さながらに片膝を折って俺に忠誠と愛を誓った。
    大げさなその行為は恥ずかしかったけど、その気持ちは嬉しかった。
    その時の俺は、この先もずっとサイファーと一緒にいると思っていたのに。

    たとえ離れてしまったとしても、気持ちだけは共にあると思いたかった。
    でも、サイファーはF.H.の話はおろか、自分がどうしようとしているかも話してはくれない。
    もし俺と一緒にこれからもいるつもりならば、当然話し合いになっているはずだ。
    これがどういう事か分からないほど俺だって馬鹿じゃない。

    サイファーは、俺と共に歩いていくつもりはないのだ。
    誓われた忠誠は、期間限定のものだったのだろうか。
    今俺に回されるこの腕は、今夜だけのものなのだろうか。
    俺は教師になるって決めたけど、気持ちだけはサイファーと共にあった。
    でも、サイファーはそうじゃなかったのだ。
    俺の心に、じんわりと悲しみがあふれてくる。
    もうやめにしなければ。
    この騎士ごっこはここまでにしなければ。



    涙があふれて、一筋こぼれてしまった。

    サイファーは、それを俺が歌声に感激したせいだと思ったようだ。

    「聞けて良かったな」

    そう言って泣き虫はまだ治んねえのかと小さく笑う。

    これはサイファーと過ごす最後の学園祭なのだ。

    「聞けて良かった」

    そう言って俺は涙をぬぐった。


    ■■■


    翌日、俺はねぎらいの言葉をかけるためセルフィの元へと向かった。
    学園祭の後片付けをしていたセルフィは、少し疲れた顔をしていたけど、それでもやりきった達成感でいっぱいだという様子だった。

    「おつかれ!」

    そう言って片手を挙げると、セルフィがピースサインを返してくる。

    「どうだった?最高だったでしょ~?」

    セルフィの明るい声が嬉しい。沈んだ気持ちが浮上していくようだ。
    俺はセルフィにあのボーカル凄かったな!と伝えると、そうやろ!!と嬉しそうに応えた。


    そうしてセルフィと話していたのだが、いつのまにやら俺も舞台の片づけへと引っ張り出されてしまった。
    話に夢中で気付かなかったが、良く見るとスコールもため息をつきながら舞台の隅で小物の片づけをしていた。(近くにはリノアの姿もあるから逃げられなかったんだと思う)
    更にキスティスまでもステージ裏で片づけの指示を出しているではないか。
    きっと俺と同じように声を掛けに来たところを捕まえられたに違いない。
    おそろしい捕捉力だ…と俺はひとり震えあがった。
    (ちなみに、当然のようにアーヴァインは楽器を片付けていた)

    片づけもひと段落して、セルフィがみんなにおつかれ!と缶コーヒーを配って回る。
    そうして、ともなくいつものメンバーが集まると、みんなでプルトップを開けてようやく肩の荷を下ろした。
    ここに来たときは昼すぎだったはずなのに、いつのまにやら夕方近くになってしまった。

    「もうじき10月か」

    夕陽を見ながら、ぽつりとスコールが零した。

    「みんなと一緒に居られるのもあとちょっとね」

    スコールの言葉を受けて、キスティスがそうさみしそうに微笑んだ。
    もうそんな時期になったのかと、俺も時間の進む早さに驚く。

    すると、キスティスの一言を耳の端で捉えたセルフィが駆け寄ってきた。

    「ねえ、みんなで海いこっか!ここ、周り全部海だし丁度いいやん!キスティスとの思い出づくり!ね?」

    セルフィがみんなの顔を見回す。
    最近はみんなそれぞれの任務に忙しくて、以前のように全然集まることができないでいた。
    俺もずっとそれを寂しく思っていたから、同意の胃を込めて頷くと、どうやらみんな同じ気持ちだったようだ。

    「決まりだよ~!いそげいそげ~!!」

    セルフィはそう言って、みんなの手を引っ張った。




    F.H.の下層で敷鉄板に波が打ち寄せる場所を見つけたセルフィたちが、楽しそうに水を掛け合っている。
    当然のように巻き込まれたスコールも、水を滴らせて棒立ちになっていた。

    俺とキスティスは少し離れた鉄橋の上で、ゆったりとそれを見ていた。
    ゼルもやろうよ、と誘われたけど、俺はまだサイファーの件でちょっと凹んでいて、そういう気分にはなれなかった。
    キスティスはさっきまであそこでセルフィたちと騒いでいたけど、休憩と言ってここまで登ってきた。

    辺りに波の音が響く。時々、きゃあきゃあと騒ぐ声がなんだか遠くに聞こえる。
    夕陽が沈み始めている。
    まだほんのり暖かい空気が、だんだんと冷たい冬の様子を見せ始める。


    「なあ、ガーデン辞めたらどうするかもう決めてるのか?」

    昨日からサイファーの件で気にしていたその事が、俺の心から溢れて自然と口からこぼれた。

    キスティスが、んー…と少し間をおいて口を開く。

    「実は、まだ決めてないの」

    それはなんだか楽しそうな声だった。
    意図を測りかねて、俺は海を見つめるキスティスの言葉を待った。

    「軍への入隊希望の締切は年末だから、それまでに色々なことをやってみようと思って」

    キスティスはうーんと背伸びを一つするとそう答えた。

    「ガーデンを離れるのって変な感じだけど、自分に何ができるのか試してみたい」

    そう言って、すごく綺麗な表情で笑ったんだ。

    おれはドキッとした。
    サイファーも、もしかしたらそういう気持ちがあるのだろうか。
    新天地で、自分を試したいのだろうか。


    キスティスになら、こんなにはっきりと聞けるのに。
    どうしても。
    俺はまだあの男には、この一言が言えないでいる。
    聞いたら、自分たちの関係が終わるのがわかっているからだ。

    でも俺ももう、歩き出さなきゃいけない。

    サイファーが言いたくないなら、それでいいじゃないか。
    俺も俺の道を歩く、それだけだ。
    俺も男だ。ぐちぐちと駄々をこねたりはしないようにしよう。

    そう決意して、キスティスと共に沈みゆく夕陽を見送った。



    つづく





    あいかわらずスランプ中ですが、なんとかまとまったので投下します。
    まとめるときに大きく修正するかもしれません…!




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    拍手押してくださった方ありがとうございます!
    前回書き忘れてしまって申し訳ありません!
    更新なかなかできないのに応援していただきほんとにありがたいです!
    がんばります~!!
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