チキン調教師の朝は早い。

  • 小話続きです~!

    こんばんは!
    自分が思っていたよりずっと更新する時間が無くてむずむずしております…。目算あまいですね…。
    漫画も新しいタブレットでしこうさくごしつつ描いていたら意外と時間が掛かってしまって、遅筆をなんとかせねばと頭をなやませております。
    tumblerぜんぜんこうしんできぬ…。


    さて、以下小話続きです。


    それからしばらくたったある日。
    ゼルがリビングでテレビを見ていると、任務を終わらせたサイファーがゆらりと帰ってきた。
    そうとうキツい任務だったようで、疲れのためかサイファーの足取りは怪しい。
    ゼルの腰掛けるソファにコートをドサリと投げると、ゼルの呼びかけも無視して自分の部屋へと入ってしまった。
    ソファーを立ち上がりかかったゼルは、サイファーがベッドに倒れ込む音を聞いて、再びソファーへと腰を下ろした。
    しばらく寝かしてやるか。
    ゼルはそう思って微笑むと、無造作に投げられたコートを片づけるため再び腰を上げた。
    でけえコート。
    コートをハンガーに掛けるために広げてみると、その大きさと重さに驚く。
    サイファーはこのコートをなかなか触らせてはくれないのだ。
    自分との体格の差を如実に感じて、なんだか悔しい気持ちがこみ上げた。
    以前このコートに触れたのは、半年近くも前のことだ。
    そういえば、とゼルはその時のことを思い出す。
    確かこの辺だったはず…。
    ゼルはコートの襟の内側の縫い目の辺りを探るように触った。
    すると、そこには本当に小さな、知らなければ見つけられない程に目立たないポケットがあった。
    隠しポケットという奴だ。

    「これだ」

    ゼルはそう呟くと、興味津々といった顔でそのポケットを見つめる。

    サイファーと共にこの部屋へ移ってきた際、ゼルはサイファーからこのコートには隠しポケットがあるということを聞いていた。
    それは部屋で二人でささやかなお祝いをして、二人ともアルコールが入った時のことだ。
    それまで上機嫌で飲んでいたサイファーが、しばらくの沈黙の後、しずかにそう口を開いたのだ。
    回らぬ頭で聞いていたゼルは、サイファーに見せてくれと懇願したが、サイファーは首を縦には振らなかった。
    その代わりにと、別の物をもらったのだ。

    ゼルは、ごくりをつばを飲み込んでそのポケットへと手を伸ばした。
    どれだけ頼んでも見せてもらえなかったのだ。よほど大切な物を入れているに違いない。
    ゼルはその指二本が入るかどうかという隙間に指を差し入れた。
    すると中には小さな固いものが入っていた。
    それを慎重に取り出すと、目の前にかざしてじっくりと観察する。
    それは、親指の爪程の小さな四角く黒い物体だった。
    角は丸みを帯びていて、カードのように薄い。
    しかし、端の方に赤いランプと電源スイッチがあり、現在もランプは点灯しているので、何かの機器なのだろうことはゼルにも分かった。
    だが、博識のゼルにもこれだけではこの物体が何かは分からなかった。
    もっとよく見ようと裏返すと、同じように真っ黒の面ではあったが、小さいマークのような物があるのを見つけた。
    白色で書かれた稲妻のマークがそこにはあった。
    どこかで見た覚えがある。
    ゼルは目を細めてじっとそのマークを見つめる。
    確かサイファーに…。
    そうだ、思い出した!
    ゼルは勢いよく顔を上げると、自分の部屋へと駆け込んでいった。
    確かこの辺にしまったはずと、デスクの引き出しを引っかき回す。
    すると、ようやくゼルは目的の物を見つけて手に取った。
    小型ディスプレイのついたカード大のサイズの電子機器だ。
    裏側を見ると、確かに同じマークがそこにはあった。
    これはあの祝いの晩、ポケットを見せる代わりにとサイファーがゼルにくれた物だった。
    真剣な顔で、本当に困ったときに使えと、そう言っていた。
    ゼルは当時のことをもっとよく思い出そうと目を閉じて思考を巡らせるが、それ以上は思い出すことができなかった。
    アルコールが入っていて、その晩はこれからの生活を思って浮かれていたのだ。
    これも貰ったまま、使い方も分からずほったらかしになっていた。

    ゼルはまだ電源が生きていることを願いつつ、ディスプレイのスイッチを押した。
    すると、そこには地図のような物が映し出された。
    そして、中央に赤く点滅する赤い光がある。
    ゼルはしばらく画面を見つめていたが、この赤い光があのポケットの中身ではないかと気付く。
    試しに電源スイッチを切ってみると、点っていた赤い光は消えていった。
    同時に、ディスプレイの赤い光もだ。
    ゼルはここにきてようやくコレが何なのかに気付いた。
    気付いてしまうと、ひやりと背中に汗が流れる。
    コレ、発信器だ。追跡用GPS発信器。
    同時に疑問もわいて出る。
    どうしてサイファーがこんな発信器を持っているのか?
    普通、発信器は追跡したい人物にこっそり持たせるものだ。
    自分で発信器を持つ意味はないはず…
    そう思いかけたその時、ゼルは恐ろしい事実に気付く。
    心臓が急速に音を立てて鳴り始める。
    違う。コレは、誰かを追跡する為のものじゃない。
    『自分の位置を知らせるため』に持ってるんだ。
    もし拉致や監禁にあったときに、自分の位置を知らせるために。
    この『俺』に知らせるために。

    ゼルは自分の部屋のベッドに力が抜けたようにドサリと腰掛ける。
    頭の中はすっかり混乱してしまった。
    本当に困ったときというのは、サイファーが行方不明になったときの事だったのか。
    何故サイファーがそんな事を気にするのか、SeeDの仕事は危険だって言っても俺だって同じの筈…だろ?

    そう思って、自分とサイファーの違いに気付いて愕然とする。
    サイファーは、前科のある身だ。
    ガルバディア、トラビア、バラム、エスタ…。多くの国が、あれだけの事をして軽い罪で終わったサイファーを恨んでいる。
    サイファーに復習したい奴はごまんといる。
    ガーデン内でも、サイファーを良く思わない奴らがいるのを、ゼルは知っていた。
    ゼルはサイファーが置かれている状況にふるりと震える。
    そうして、今までの疑問がゼルの中にぬるりと入り込んでくる。

    なぜサイファーはいつも手袋をしているのか。
    なぜ食器を拭うのか。
    なぜ行列を嫌がるのか。
    なぜ外食が嫌いなのか。
    なぜキャッシュで払うのか。
    なぜ窓際に座らないのか。


    唾液や指紋を採取されたら?
    見知らぬ人間に背後に立たれたら?
    食事に薬を盛られたら?
    カードの情報を抜かれたら?

    頭の中で全てが繋がる音がする。
    何故今まで気付かなかったのか。半年も一緒にいたはずなのに。
    ゼルはベッドの上で、悔しそうに拳を握った。

    窓際を避けるなんて、狙撃を警戒してるに決まってるじゃねえか…。

    ただ景観がいいからと、何も考えずサイファーを危険に晒していた自分を殴ってやりたい。

    サイファーは常に緊張感のある中で生活をしていたのだ。プライベートの時間も生死を背負っていたに違いない。

    そう思ったら、もういても立ってもいられずにゼルはベッドから駆けだしていた。
    リビングを駆け抜けて、そうしてサイファーの部屋のドアを勢いよく開ける。

    ベッドで休んでいたサイファーにお構いなしに飛び乗ると、その体を強く抱きしめた。
    眠りかかっていたサイファーはいきなりの襲撃に、つぶれた蛙のような声をあげてゼルの衝撃を受け止めた。

    「なんなんだテメエ…」

    腹部でゼルをうけとめたせいで咳込みながら、サイファーが抱きつくゼルを軽く叩く。
    ゼルはサイファーの胸に顔を押しつけながら、何かボソリと声を発した。

    「何だ、聞こえねえぞ」

    サイファーがゼルの顔をのぞき込もうとしたその時、ゼルはガバリと顔を上げて真剣な表情で口を開いた。

    「アンタの背中も俺がちゃんと守るから!だから俺といるときくらい、心も体も休めてくれよ!」

    そう言って、今にも雫がこぼれそうな瞳でサイファーを見つめていた。

    突然始まったゼルの話に、理解が追いつかず眉を顰めていたサイファーだったが、自分を心配するその様子にようやく何を言っているのかを理解したようだった。

    「これは俺が自分で背負い込んだもんだ。オマエには関係ない事だ」

    サイファーはそういって、先ほどとは違う真面目な顔でゼルに向き直った。
    ゼルは言葉足らずなその台詞が、サイファーが自分を心配して発したものだという事はすぐに分かった。
    だが、感情は追いつかない。

    「俺はあんたと暮らしだして凄く楽しかったし、癒されてた。でもアンタはそうじゃなかった。そんなの許せるかよ。俺だってアンタの力になりたいに決まってんだろ!バカにすんなよ!」

    最後は叫ぶようにそう言って、サイファーの胸ぐらを掴んだ。
    まるで喧嘩をしているようなそのやりとりだったが、先ほどからきらきらと光るゼルの瞳からついに一筋の光がこぼれ落ちるのを見て、サイファーは心の中にじんわりと広がる暖かいものを感じた。

    「ありがとよ」

    サイファーは静かにそう言うと、ゆっくりとゼルを抱きしめた。
    止まり木を見つけた小鳥のように、暖かなその体に寄りかかった。


    おわり




    短くするつもりが意外と長くなってしまってこちらも時間がかかりました。
    やっぱり目算甘いんだなあと実感です。
    でも次はゼル君が道具でエッチなことする話書きたいのでがんばります!!



    ーーーーーーーーーーーーーーーーー

    拍手押して下さった方ありがとうございます!!
    更新なかなかできないのにいつもありがとうございます~!



    7/1にコメント下さった方ありがとうございます!
    小話楽しみにして下さってとても嬉しいです!
    待っていて下さる方がいると思うと頑張れます!
    まだまだ色々書きたいので、またおつきあい下さいませ~!




    7/8にコメント下さった方ありがとうございます!
    ギャグ漫画はいつもちゃんと面白いかな…?とひやひやしながらアップするので楽しく読んでいただけたと聞いてホッとしました&描いた甲斐がありました!
    ゼルとサイファーのやりとりまできちんと見て下さってとても嬉しいです!
    ご感想ありがとうございました~!

Copyright © Textt / GreenSpace