チキン調教師の朝は早い。

  • 早速ですが小話続きです!

    こんにちは!
    更新遅くなるとかいってましたが、小話続きです!
    サイゼル書いてると私生活のストレス解消にもなって一石二鳥です。


    以下小話続きです!




    翌週のサイファーは、毎日のように訓練施設へ足を運んでいた。
    それは何日も眠っていたせいで体が鈍ってしまったからでもあり、持て余す自分の感情を発散させるためでもあった。
    週末のティンバーへ出かける前にも、サイファーはモンスター相手に暴れようと訓練施設へ向かった。
    敵の血で刃を汚すと、その度に体が沸き立つ。
    それに任せて周囲のモンスターを一掃してしまったようだが、それでも体はもっと熱いモノを求めている。
    サイファーは場所を変えようと鬱蒼とした木々の間を歩き出した。
    すると、奥の方からモンスターのうめき声が聞こえてきた。
    悲鳴のような断末魔が、その戦闘の激しさを物語っていた。
    誰かいるのかと興味本位でそちらへ向かう。
    近づく度に、打撃音や破壊音が大きくなり、モンスターの悲鳴が辺りに響いている。
    だかそれがピタリと止んで、辺りにしん…と静寂が広がった。
    音がしていた中心地にたどり着いたサイファーは、気配を殺して木々の間からそちらをうかがう。
    少し開けた場所に、ゼルが一人で佇んでいた。
    周りにはグラッドの死体が山積みになっていて、本人もモンスターの体液でずいぶんと汚れている。
    あの事故ぶりに見かけたゼルに、サイファーの感情が高ぶる。
    任務は無事済んだと聞いていたが、直接会うことがなかった為無事だったことをようやく実感する。
    そのゼルといえば、いつもと違う雰囲気を纏っていて、俯きながら拳を握りしめていた。
    サイファーが様子を見ていると、ゼルは勢いよくその握りしめた拳を地面へ突き立てた。
    あまりの力に一瞬辺りに地鳴りが響いた。
    俯きざまにちらりと見えた顔は悔しそうに歪められていた。
    その様子に、普段ならからかい半分に声を掛けるサイファーだが、とても近づける雰囲気ではなかった。
    ゼルはゆっくりと立ち上がると、自分の拳をじっと見つめた。
    そうしてぐっと堅く瞳を閉じると、再び拳を堅く握りしめて目を開いた。
    遠くを見るその瞳には、先ほどまでの悔恨の色は浮かんでいない。
    それは、何か覚悟を決めた表情のように見えた。
    サイファーは見ては行けないものを見てしまったような気がして、妙に心がざわめいた。
    サイファーはその気持ちをうまく処理できないまま、踵を返してティンバーへと向かった。


    任務終わりにエクセルに会ったサイファーが考えるのは、先ほど見たゼルのことばかりだった。
    金の髪も、傷の多い体も、少し日に焼けた白い肌も、青い瞳も、話す度にちらりと覗く犬歯も、落ち着きのない所も、口角を上げて笑う癖も。
    知らず知らずのうちに、エクセルの中にゼルの面影を探してしまう。
    肌を辿って交わっても、どうしてもそれが忘れられない。
    揺すられるエクセルが彼だったらどれだけいいだろう。
    甘く自分の名を呼ぶエクセルにたまらなくなって、サイファーはおもわず口を開く。


    「ゼル」


    そう呼びそうになった。
    この男はゼルではない。エクセルという別の人間だ。
    だが呼ばずにはいられない。自分の気持ちをぶつけずにはいられなかった。

    最初にエクセルが言った言葉がサイファーの頭の中に鳴り響く。

    「みんな『ゼル』を目当てに俺を抱きに来るんだぜ」

    こんな気持ちだったのかとサイファーは歯を食いしばった。
    今ならこの男を抱きにくる男たちの気持ちが心の底から理解できる。
    ゼルを抱けない鬱憤を、こうして晴らしているのか。

    「ゼルだと思ってくれていいよ」

    そう、言ったはずだ。
    この男は、自分をゼルの代わりにしてもいいと言ったのだ。
    サイファーはその甘い誘惑に陥落する。
    何度も心の中でゼルの名を呼びながら、熱を叩き込む。
    ゼルと同じ声が、たまらないと喜びの悲鳴をあげる。その度に口からゼルも名前がこぼれそうになるのを歯を食いしばって堪えた。
    身代わりのゼルと交わって、サイファーは果てを迎えた。

    息を整えながら隣の男へと目をやる。
    少しの罪悪感がサイファーの中でわき起こった。
    エクセルは攻められるうちに何度かイったのか、怠そうに横たわっていた。
    だが、ゆっくりと体を起こすと、隣で休むサイファーにゆったりとはなしかける。

    「今日、凄かったな…あんた」

    そう言って、エクセルは少し赤くなった。
    こういう初々しいところが、たまらなくなるんだとサイファーはそっと思った。

    「まあ、色々あって溜まってたんだ」

    嘘は言っていないはずだ、とサイファーは自分を納得させる。

    「…あんたでもそういう事ってあるんだな。意外だぜ」

    エクセルはベッドにうつ伏せになって顔の前で組んだ腕に顔をうずめた。
    しばらくそうしていたが、ゆっくりと顔を上げてサイファーに問いかけた。

    「なあ、魔女の騎士だったって言ってたろ?今でも世界を破壊したいって思ってんの?」

    エクセルが、まるで今日の夕食を聞くかのような軽さでそう問いかけた。
    その内容の見合わなさに、サイファーはエクセルがわざとそんな言い方をしたのだと直ぐに分かった。
    口調に反する真剣な瞳に、サイファーは深く息を吐いて答えた。


    「世界のことなんざどうでもいい。魔女が望むことを叶えたかっただけだ」

    サイファーはエクセルをじっと見つめながら、自分の本心を語った。
    エクセルをゼルの代わりにしてしまった謝罪の意味もある。

    「世界の破壊なんて望んじゃいない」

    だが単純に、このゼルに似た男には、嘘を言いたくはなかった。

    「そっか…。よかった…ほんとに」

    そう言ってエクセルは胸をなで下ろした。
    その様は、何かから解放されたようにも見えた。
    そうして覚悟を決めたように話し出した。

    「俺さ、アンタのこと好きなんだと思う」

    エクセルはそう言うと、寂しいような物悲しい笑顔を見せた。

    「オレにこんなこと言われても困るのは知ってる。だけど、知っといて欲しかったんだ。俺の気持ち」

    そうして、行き別れる恋人に言うように言葉を続けた。

    「どうしても言っときたかったんだ」

    サイファーはそれを、静かに受け止めた。
    嫌悪感はなく、むしろ何か同じ気持ちを持つ仲間のような、妙な連帯感すら感じた。
    だが、ゼルに言われたのなら良かったとそう思って、自分の欲深さにそっと目を閉じた。


    つづく



    ようやくサイゼルっぽくなってきました!
    終盤ですので頑張ります!
    早く続き書きたいです…!

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