チキン調教師の朝は早い。

  • 小話さらにつづき!これで終わりです~!

    こんにちは~!オペオムでインターセプターに痛い目にあったというゼルが、犬と戯れる的な意味で性的に見えて仕方ないにょるです!
    小話続き出来ました~!ようやく完了です!
    おつき合いありがとうございました~!




    あれから何事もなく数日が過ぎた。
    あまりに安寧とした日々に逆に不安が募るほどだ。
    ゼルはあの日のことは何も聞かなかった。いや、いつもと変わらないただの任務だと思っているし、聞いたところで任務内容は秘匿事項だ。俺が話すとは思っていないのだろう。
    念のために口止めもしてあるから、問題はないはずだ。

    そう思って別の任務へと出かけた。
    ゼルもまた、キスティス達と共に別の任務に出かけたようだ。

    何事もなく終わったと確信していた。
    だが、俺の不安は的中することとなる。

    家に帰ると、ゼルがあの日のようにソファへと座っていた。
    だが、前とは違いテレビの電源も入っていなければ何も食べてもいない。
    ただじっと床の一点を見つめて、そこに座っているのだ。

    何があったのかと近づこうとすると、静かにゼルから声が掛けられた。

    「アンタ、女の人と寝たのか」

    ドクンと心臓が鳴った。
    体中の血が一気に下がって、急に体が冷たくなる。
    俺ともあろう者がその場から動けなくなった。
    動揺したのだ。

    女と寝たのなんて過去いくらでもある、だとか気持ちは無い、だとか色々な言葉が一瞬で頭をよぎったが、普段とは違うゼルの様子に何も口に出来なかった。

    「この前の任務、ガルバディア軍で諜報任務だったんだろ?」

    続けざまにピタリと言い当てられて、冷や汗が出る。
    なぜそれを知っているのか?
    あれだけ口止めしたにも関わらずシュウやキスティスが漏らしたのか?まさか学園長が?
    俺は怒りに拳を握りしめた。

    「誰から、聞いたんだ」

    出来るだけ怒気を抑えた声で問いかける。
    こいつにだけは知られたくなかった。
    汚い仕事は、見えないように済ませたかったのに。

    だがそんな俺にはお構いなしに、ゼルは淡々と話し続ける。

    「誰にも。俺がそう思った。」

    床を見つめたまま、言葉を続ける。

    「ガンブレード置いてったろ。」

    心臓が五月蠅いほどに鳴る。

    「モンスター相手じゃないって分かった。」

    手の震えがとまらねえ。

    「着替えも泊まる荷物も持ってかなかったろ」

    呼吸が苦しい。

    「制服や住居一切が与えられるとこだって分かった。」

    こいつは、恐ろしい奴だ。

    「出かける前、髪切って整えていったろ」

    俺の予想を超えてくる。

    「見た目がいるって分かった」

    甘く見ていた。

    「帰るって連絡来てから半日で帰ってきただろ」

    何にも分かってないガキだと思ってた。

    「ガルバディアへ行ったって分かった」

    こいつもSeeDだ。しかも手練れの。

    「帰ってきてから、キスティとシュウのあんたを見る目が変わってた」

    少しの情報から戦況を読み、状況を分析できる。

    「前みたいに同僚としてじゃない、男としてアンタを見て緊張してた」

    俺と同じ、AランクのSeeD。

    「そして、あの日、あんた帰ってきてからおかしかった」

    恐れ入った。

    「普段は夜ベッドまで我慢すんのに、そうじゃなかったし」

    敵わねぇ。

    「『おまえだけだ』って言ったんだ。何度も、何度も、おまえだけだって」

    隠し通せるなんて俺の思い上がりだった。

    「だから分かったんだ」

    すべて言い当てられて、もはやなにも言い返せなかった。

    ただ一つだけ、もっとも恐れていたことだけが口からこぼれた。

    「怒ってるのか」

    当然だと思った。
    俺なら例え任務とはいえゼルが女と寝に行ったら。それだけじゃねえ、男に抱かれに行ったとなれば。
    他の男に貫かれて甘い声をあげるのか?
    体を火照らせて、もっと奥に欲しいとねだり足を開くのか?
    考えただけで怒りに目が眩む。冗談じゃねえ。俺以外にそんな事をするのなんて絶対に許せねえ。
    ふつふつと沸き上がるそれを押さえていると、それまで一点を見つめていたゼルが振り返ってこちらを見た。

    「怒ってねぇよ。」

    何でもないようにさらりと言い放った。

    「だって仕事だろ?」

    あまりにあっさりした物言いに、虚を突かれて言葉が出ない。

    「俺だって行くぜ。それが寝所でも、勝ち目のない戦いでも」

    そうか。
    こいつは…生粋の戦士なのだ。
    俺とは違う。
    俺が守るもののために戦う騎士で、こいつはソルジャーか。
    SeeDを誇りに思い、軍人の祖父を誇りに思う、ソルジャーだ。

    「また、俺にそういう仕事が来ないとはいえねえぞ」

    暗に構わないのかと問いかける。
    だがゼルの答えはスムーズだった。

    「でも、俺だけなんだろ?」

    確信を持って言い切った。
    ああそうだよ。おまえだけだ。
    ガキの頃から俺の心をかき乱し続けてるのは。

    「おまえだけだ。これから先も」

    「ならいい」

    そう言って、いつもの笑顔でニカリと笑った。

    「俺は…おまえが俺以外と寝るのはお断りだ」

    「おう、知ってる」

    ゼルは完全にこちらを向いて、ソファーの背に顔と腕を預けて甘えたようにそう言った。

    「でもお前は仕事が来たら行くんだろ?」

    少しすねたような言い方になったが、今更だ。
    だが、ゼルの答えは意外なものだった。

    「いや、断る。あんたが悲しむ顔は見たくねえし」

    俺はその答えに急に笑いがこみ上げてくる。
    一番最初に仕事内容を聞いたときの俺と同じ答えじゃねえか。

    突然笑い出した俺に、今度はゼルが驚く番だった。
    どうしたんだよ、変なこと言ったか?膝立ちになってソファから乗りだしている。

    「最高だ」

    結局俺たちは正反対のようで似てるって事か。
    俺以外には抱かない抱かれないと聞いて機嫌もいい。

    「今日は外にイイモン食いに行くか」

    突然の俺の提案にまだゼルは理解が付いてきてないらしい。
    わけがわからんという顔でぽかんを俺を見つめている。可愛い奴め。

    「例の任務。いい報酬だったからな。」

    俺は普段の調子でニヤリと笑ってそう言った。
    女のことなど知ったことか。
    俺たちは傭兵だ。コイツのために金を稼いで、コイツに還元する。
    それだけだ。

    ああ、でも、もうこいつ以外には勃たねぇかも。
    ニヤリと笑った俺を見て、頬を染めながら可愛い顔をしているこいつをみて俺はそう思った。


    終わり



    ゼルとサイファーの仕事感の違いが書きたいと思って作り始めたお話です。
    ゼルは意外と現実主義で、仕事だと割り切れるタイプだけど、
    サイファーはロマン派で、仕事とはいえ感情が入ってしまうんじゃないかなぁと思います。
    でも結果的にはお互いのことを考えてるっていうの
    めっちゃ萌えます…。








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