チキン調教師の朝は早い。

  • 小話続き R18です!



    ■■■


    つまりは、ハニートラップというやつだ。
    こんなもん引っかかる奴がアホだと前々から思っていたが、意外と巧妙に仕組まれていて、トラップと言うだけはある。なるほどうまくできている。
    ガルバディア士官学校上がりの新人で、位は曹長。名前はライル。
    それが俺に与えられた人格だ。
    好物はラム肉、キッシュが嫌いで、出身はガルバディア、両親は共に交通事故で故人。剣戟が得手で射撃の成績はまぁまぁ、恋人は無し。現在は軍の寮に入るための引っ越し準備中。
    ガーデンがどうやってこの地位と人物を用意したのかは知らないが、軍に潜入した俺がスムーズにライルとして受け入れられたことを見るに、時折替え玉用の人物を養成学校へ入学させているのかもしれない。
    その立場をそのまま俺にスライドしたってわけだ。
    現に、実際のライルと思わしき人物の写真を見たが、金髪碧眼で体格も俺によく似ていた。俺にお鉢が回ってきたのはそのせいだ。
    本来なら俺はガルバディアでは有名人なんだろうが、好都合にもアルティミシアが消滅する際に皆の記憶もあやふやにしていったおかげで、俺のことを覚えている人間はいない。

    ガーデンの規則ですら遵守するのはだるいと思っていたが、軍の規則ってのはなおさらだ。めんどくさいったら無い。
    俺は集められた新人共と演習場に整列しながらひっそりとため息を付いた。
    その時、演習場に数人の男女が整然とした歩調で入ってきた。そのまま俺たちの前まで来るとかかとを揃えて停止する。
    一人は黒髪の男で狼のように痩せている。もう一人の男は筋肉質で、端正な顔をしている。(一般的にはそう表現する顔だ)そうして金の髪を撫でつけるように帽子を被り直していた。
    そうして、その男に意味ありげな視線を送っていたもう一人の女。ゆるく巻いたブルネットに挑発的な視線。
    …ターゲットだ。
    アイツが隊長で、両隣男は副官か。
    同じ所属に配属するとは言っていたが、こんなに早く近づけるとは、あの狸親父もなかなかやり手だな。

    さて、どうやってあいつに取り入るか。
    そう考えていた俺に、皆に順に名前を名乗らせていた女が近づいてくる。

    「貴様、凄い目でこちらを見ていたな」
    ドクリとした。
    早速見抜かれたかと心臓が跳ねる。

    「Yes,Ma'am」

    ぐっと跳ねる心音を押さえ込んで、口元に少しの笑みを浮かべてそう言った。

    「その瞳、まるで禍時の闇が溶けているようだ」

    出会ったばかりの上官にこの態度はないと自分でも分かっているが、惚れてもいない女を甘く口説くなんて出来るはずねぇ。挑戦的な言葉と共に、女に熱の籠もった視線を投げた。
    女はほう、と何か感心したかのように視線を受け止めると、妖艶な唇からねっとりした声を出した。
    「名乗りなさい」

    「Yes,Ma'am.ライル=ザイフェルト」
    真っ直ぐ女を見据えて腹の底から声を出した。
    女は俺を上から下まで舐めるように見ると、口に弧を描いてそのまま元の位置まで戻ってしまった。
    ふと視線を感じて女の隣に目をやると、副官のガタイのいい金髪が俺を睨むように見ていた。

    以来、俺は女の視線を端々で感じながら勤務に当たっている。俺の所属は情報処理で、退屈ったらありゃしねぇ。
    あれ以来、なかなか女に接触できる機会もなく、俺のイライラは頂点に来つつあった。
    入隊から2週間も経った頃、いい加減退屈に耐えかねて自主トレーニングに使用できる演習場へ通い出した。流石にガンブレードは置いていないので、大剣を手に素振りを繰り返す。
    訓練に汗を流していると、ざわりと辺りが騒がしくなった。
    金髪の副官がこちらを睨んでいた。

    「貴様、新人の割になかなかやるな」
    そう言って、俺に近づいてくる。
    「手合わせでもどうだ?俺が直々にしごいてやる」
    そう言って、有無をいわず構える。
    暇つぶしだ。俺も、無言で剣を構えた。
    相手が飛び込んでくる。ガキン!と金属の刃がぶつかる音が響く。いくらか打ち合って分かったが、こいつもなかなかいい腕をしているが、俺やスコールほどじゃない。
    いいとこ新人SeeDといったところだ。
    次第にその差は明確になっていき、最後には奴は剣を取り落として床に転がった。
    男が息をあげながら、床から悔しそうに睨みつけてくる。
    その時、俺たちを見守る観衆の中に、熱の籠もった視線を感じた。振り返るようにそちらを見ると、あの女がこちらを見ていた。
    床の男には目もくれず、俺だけを熱く見つめている。
    そうして、場が解散する際のすれ違いざま、俺にこっそりメモを手渡してきた。

    メモを見ると、『2300』とだけ殴り書きで書かれていた。
    奴からの『お誘い』だ。

    だがようやく分かった。あの女、副官と出来てやがったな。だが飽きてきたところに俺が来た。
    あの狸親父…。任務前に、俺に引っかかんなかなったらどうすんだって聞いた俺に心配の必要は全くありませんだなんだと言ってたが、金髪碧眼のバルクある奴が好みだって最初に言っとけよ。どうやって引っかけるかなんて柄にもないこと考えちまったじゃねえか。
    新人見回しても金髪は俺だけだ。既定路線だったんじゃねえか、くそ。

    だが、このチャンスを逃すわけには行かない。俺はシャワーを浴びてデータコピー用のミニディスクを制服の襟の下に忍ばせると、ベッドに座ってただその時を待った。

    今夜11時をーーー。


    ■■■



    時間ぴったりに俺は女の部屋を訪れた。ノックをすると、すぐにドアが少し開かれて、入ってこいと合図される。
    隙間に滑り込むようにして部屋に進入する。
    部屋は薄暗く、間接照明の橙の電球色が部屋のあちらこちらに散っている。
    香が焚かれているのか、部屋中に甘い香りが漂っている。
    女はゆったりとバスローブを羽織っていた。胸元から、張りのある胸が覗いている。

    「いらっしゃい、ライル」
    そう言って、俺にスコッチを勧めてくる。
    そのままグラスを受け取って、ペロリとなめる。ピート香りが鼻をくすぐる。
    女も声無く笑って、グラスを傾ける。

    何も言わずただ沈黙が流れた。
    だが、お互いに一瞬たりとも視線を外さない。ねっとりと視線が絡む。
    俺への視線をそのままに、女は部屋の中央に置いてあったベッドへと腰掛けると、バスローブをほどいて肩からするりと滑り落とした。
    「   」
    女の口が何かを発したが、そんな事はどうでもよかった。
    ーー仕事が始まる。

    俺は無言で女に近づくと、そのまま押し倒した。
    乳首を舐めて下肢へと指を這わせる。そのまま下肢を揉みほぐそうと普段の癖でアナルに指をやって気づく。女相手だからココは使わねえんだ。何年も女なんて抱いてねえからな。習慣ってのは恐ろしい。
    正直、ゼル以外に勃つか心配だったが幸運なことに女は声を殺すタイプで、ノるまでは声を殺すアイツに少し似ていた。そのおかげで緩く勃った俺のそこは、既にアイツに入れたくて仕方が無くなっていた。


    続く



    とりあえずここまでです!
    男の抱き方が染み着いちゃってるサイファー萌えます…!
    ゼルがあんまり出てこないですが、このパートおわったらゼルきます!




    拍手ありがとうございます!続き頑張ります~!
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