チキン調教師の朝は早い。

  • 小説とりあえず完結ですー!

    「お、まえ…」

    人影の無い静かな寮の廊下に、サイファーの口から零れた小さな音が響き渡った。
    ドアを開けた自分の目の前に立つ、ゼルをまじまじと見詰める。

    「よう」

    目の前の焦がれる人物の口から、予想外に明るい声が発せられた。
    数日前のアーヴァイン反応からして、しばらくは会えないと思っていただけに、その衝撃は凄まじかった。
    次の瞬間、その小柄な体を抱きしめていた。
    そのまま自身の部屋へと引きずり込んだ。

    「おいっ、サイファー!苦しいって!」
    突然きつく抱きしめられたゼルは、サイファーの胸を叩きながら抗議の声をあげた。
    サイファーは腕の中の抗議に少し力を緩めたものの、ゼルの背中に腕を回したまま、その身を自由にはしなかった。
    「なぜここに来た」
    ゼルの顔を見詰められないまま、サイファーは最も疑問に思っていたことを口にした。
    ゼルは一呼吸すると、サイファーへとしっかりと顔を向けて言い放った。
    「あんたとちゃんと話したいと思って」
    ゼルの迷いの無い言葉に、サイファーはゴクリと唾を飲み込んだ。
    自分のしたことは分かっているし、後悔もない。そしてゼルから次に言われる台詞は分かっている。
    もう俺の前に現れるな、だ。
    もちろん従うつもりなど毛頭ないが、全くダメージが無い訳でもない。
    サイファーは次に来る台詞を身構えた。

    「嫌じゃなかった」

    ……

    「は?」
    サイファーは再びぽかんとしたように口から音をこぼした。
    「だから、嫌じゃなかったんだって!」

    ゼルの叫ぶような言い方にわれに返ったサイファーは、いつもより早口でゼルへと食って掛かる。ジワリと汗がにじんで、動悸が高鳴っていくのが自分でもわかった。
    「てめぇ俺を責めないのかよ」
    「いや、最初は何考えてんだって思ったんだけどよ…」
    「本気で抵抗できなかった俺も悪いし…」
    そう言うと、ゼルは頬を染めながら声を落とす。
    「そ、その…痛くなかったし…」

    「あんたのこと本当に嫌いなわけじゃないし」

    「くそっ」
    そこまで聞いたサイファーは、ゼルの台詞が終わらないうちにゼルに回していた腕を再びきつく締め付けた。
    ゼルは突然の抱擁にくぐもった声を漏らしていたが、耳元でささやかれだしたサイファーの声に抵抗をやめた。

    「そりゃぁ…俺のことが好きって事だろうが」

    ゼルが言われた事にビクリと反応を返した。
    指摘されて初めてその事に気付いたといった風で、サイファーはくぐもった笑いを零した。

    「まぁ体の相性はばっちりってのは分かったんだ」
    そう笑って言うサイファーに、ゼルは何言ってんだとサイファーの腕の中で抗議の声をあげた。
    そのゼルの抵抗を受け流しながら、サイファーはゼルをどこか懐かしそうな瞳で見て続ける。

    「おまえ俺と付き合えよ」

    そうしてサイファーはまだごちゃごちゃと文句を言っているゼルの肩口に顔をうずめる。
    はじめてみようぜ。
    ゼルに埋めているせいで篭ってしまった声で、サイファーはゼルにそう告げた。
    ゼルの体温が一気に上がるのを感じながら、サイファーはしばらくその温度を楽しもうとおもうのだった。


    おわり


    拍手押して下さった方有難うございます!とっても嬉しいです!!



    コメント下さった方ありがとうございます!
    お返事が遅くなってしまい申し訳ありません!





    1/30小説の続き気になります~の方コメント有難うございます!
    ようやく完結しましたー!!色々やりたいこと詰め込んで書けて、とても楽しかったです!インフルエンザはほんと怖いです汗 最近は大雪でとても冷えますし、インフルだけでなくノロも流行っていますので、どうぞお気をつけてくださいね!
    コメントありがとうございましたー!




    1/31完結おつかれさまです~の方コメント有難うございます!
    なんとかゼルを幸せにしてやろうと画策しておりました笑
    やっぱりアデルは男にしか見えないですよね!私だけでなくて良かったです笑 ゼル=魔女説は、ゼルが超級武神覇拳で高速で攻撃し続けるが為に、時間が異常に長くなってしまっているのを、あれが噂の時間圧縮ではないかという考え方をするギャグ説です笑
    撮影のゼルはヒィヒィ言いながら描いたものですから、気に入っていただけたようでとても嬉しいです!
    コメントありがとうございましたー!





    kbcy様コメント有難うございます!
    ようやく完結致しました!有難うございます!
    いつも応援していただけて、モチベーションが本当に高まります!
    結末から考えたお話だったので、何年後~という発想はありませんでした!またどこかで違うお話でそういったものも描けるといいなぁと思います。この結末もお気に召していただけたようで、ホッとすると共に描いてよかったとジワジワ喜びがせりあがってきます。
    私もセルフィが絡むのが大好きなので、すぐにセルフィを出すとこがないかとプロットを練り直したりします笑
    是非是非セルフィががっつり絡んでくるお話も描きたいですね!そう言って頂けて、本当に嬉しいです!また次の作品も頑張りますね!
    コメントありがとうございましたー!

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