馴れ初めやり始める前に、久しぶりなので短編小話にしてみました!
「おい、暇だろ、ちょっと付き合えよ」
そう言って、サイファーはテーブルへとそれを放り投げた。
外ではジリジリと蝉が鳴き、高い日差しがバラムの路地を焼き付けている。
椅子に座っていたゼルは、目の前に音を立てて着地したそれを不思議そうに眺める。
「水鉄砲…?」
ビニールのパッケージに、青と緑の水鉄砲がセットで収まっている。
透明な銃身が光を反射して、テーブルにそれぞれの色を落としているのが美しかった。
「い、いいけど…あんたがこれ買ったのか?」
ゼルがサイファーへと視線を投げると、そこの道具屋でな、文句あんのかと言い返されてしまった。そのまま何も言えないまま、ゼルはサイファーの後へと続いた。
サイファーの手にする緑の水鉄砲から、勢い良く水が発射される。
それは見事にゼルの胸の辺りに直撃し、ゼルの服を容赦なく濡らした。
「っやったなちくしょー!」
ゼルも一矢報いようと渾身の狙いをこめてサイファーの狙撃を試みる。
が、水鉄砲なのにも関わらず銃を下に構え、物陰に隠れながら冷静にゼルの攻撃を読む実践さながらのサイファーに隙はない。
ゼルの放った水は、先ほどまでサイファーが居た場所を濡らしただけで、所在なさげにコンクリートの色を変えている。
「そんなんで俺に当てようってのか?もっとしっかり狙って来いよチキン野郎」
移動した物陰の先から、煽るような声がゼルのほうへと投げられた。
当然黙っていられるゼルではない。
「ぜってー当ててやるからみてろよー!」
そう言うと、時折体を出すサイファーに合わせて、腕を伸ばしきっちり照準を合わせた。
「当たるようになってきたな」
サイファーの足の辺りの生地が、水を吸って色を変え始めている。
そう言うと、サイファーは羽織っていたおなじみのコートを脱ぎ去り、近くに置いてあった積荷のような物に放り投げた。
「だがまだまだだ。ガッコで何教わったか忘れちまったか?もっと体低くして胸のちょい上狙え!」
サイファーはそう言って伏せると、こうやるんだとばかりにゼルへと攻撃を仕掛けた。
ゼルも負けじとサイファーへと銃口を向ける。
こうしていると、ガーデンで学生のころ行った演習を思い出すから不思議だ。
どのくらい時間が経っただろう、急にサイファーが銃の構えを解いて言い放った。
「もう十分だろ」
言われた意味を掴みかねたゼルがポカンとしていると、サイファーは銃身から水を抜きながら近づいてきてしまった。
どうやらもう終わりにするようだと意味を悟ったゼルが、良い所だったのにと愚痴を零しながら水を抜き始める。
あっちから誘った水遊びであったのに、まったく勝手な奴だと内心思ってしまったのは致し方のないことだと思う。
サイファーは、まったく悪びれる様子もなく、持ってきていたタオルで髪を拭いている。
最後のほうはゼルの調子も上がってきたこともあり、より難度の高いヘッドショットを狙っていたせいで、そこが他よりも濡れているのだ。
少しはお返しができたかなと、ほくそ笑んでいると、急に体に寒気が走った。
夏とはいえ、日も暮れかかっている。
「俺にもタオルよこせよ!明日定期の実技試験なんだぜ、風邪でもひいたらどうすん…」
サイファーに食って掛かろうとしたゼルであったが、口に出したことで、とある可能性に気付いてしまう。
まさか、サイファーが。いや、そんな。
明日の試験には自分の苦手な小銃の試験が含まれている。
久方ぶりに触るその項目は、ゼルの不安材料でもあった。
前日まで仕事で時間が取れなかったばかりか、小銃貸与の申請を出し忘れていて試験前日にも関わらず練習ができず、バラムで腐ってサイファーと休日を過ごしていた、気もそぞろなゼルに、まさかサイファーがこんな方法で力を貸す訳がない。訳がない、と思うのだ。
「あ、あんた、俺の為に立ち回ってくれたのか…?」
ゼルは恐る恐る、髪の水気を拭いているサイファーへと目を向ける。
タオルに隠れて、顔の見えないのが恐ろしい。
「あ?」
タオルから顔を出したサイファーは不思議そうな顔をした後、おら早く拭け、とあたらしいタオルをゼルの頭へと被せた。
まぁそうだよな、気のせいだよなとゼルが髪を拭き始めた時、死角となっていたタオルの後ろから、耳元へと声が寄せられた。
「自信持って行って来い」
今ならタオルの死角でこの赤い顔は見られないはずだからと、ゼルも素直になる。
「ありがとな、サイファー」
絶対態度には出さないけど、さりげなくゼルを心配するサイファーいいな…と思います!
サイファーはガンブレードがオートマチックなこともあって銃の扱いは上手そうな気がします。ゼルは逆に苦手かな…と思ったんですが、器用なので意外と上手かもしれませんね!
取り急ぎ小話だけですが失礼します!