桜色の日々 別館

  • Pioneer Stellanova レビュー

    自分で Pioneer Stellanova を検討している時に、実際に使用している人のレビューなどがあまり見つからなかったので、迷っている人の参考になればと思い書き残しておくことにしました。
    この文書のターゲットは「 PC/Mac でハイレゾ音源を再生したい」「 DSD をネイティブでする環境が欲しい 」「小型の USB DAC アンプが欲しい」といった層で、なおかつ既に Stellanova にある程度興味を持っている人です。

    ○ まとめ
    ・ USB DAC アンプ「 DACAPS-DA101J 」は「 DSD 対応 USB DAC アンプ」を探している人なら買って損なし。同ジャンルで最安値なのにちゃんとした作り。
    ・ スピーカー「 APS-SP101J 」はあえて買う必要はありません。値段なりではあるので、セットで安いとかスピーカーを持っていないとかなら。
    ・ ワイヤレスユニット「 APS-WF02JBK 」は買ってないのでわかりません。

    ○ 公式サイト: http://pioneer.jp/pcperipherals/stellanova/
    仕様だけでなくマニュアル、使い方なども見られますので、興味がある人は一通りは確認しておくといいと思います。
    Amazon: http://amzn.to/2ljG5iP

    ○ はじめに
    Pioneer Stellanova はスマートフォンからワイヤレスでハイレゾ再生ができることと、カラーバリエーションが選べるオーディオ機器らしからぬデザインを前面に押し出した、ミニオーディオコンポです。
    この売り方がリーチする層があまり多くないのか、実物を見ることができる販売店が少ないからか、販売されていてもほぼ定価販売の店ばかりだからか、とにかく残念ながらヒットしているとは言いにくそうな状況です。そのため、販売開始から 1 年以上経っているのですが、あまり話題になっている様子もありませんし、モデルチェンジの気配もありません。
    しかし、本来のターゲットから外れた立場にいる私から見ると魅力的な製品ですので、ここで紹介してみたいと思います。
    なお、私の使用環境が Mac ですので、基本的に Mac と接続した前提で書いています。 Windows PC ではドライバーのインストールは必要ですが、それ以外の点ではほとんど同じだと思います。

    ちなみに補足しておくと、ほぼ定価でも十分安価だと思いますし、最近は店舗でのキャンペーンが行われることもあります。
    また、特定の量販店など展示している店舗は一定数ありますので、なんとなく見かける機会こそ多くないかもしれませんが、興味があるなら見に行くことはできます。
    販売店情報: http://www.pioneer-itstore.jp/fs/piit/c/gr23
    また、メーカーより無料レンタルも行われていますので、購入前に試すこともできます。
    レンタル情報: http://www.pioneer-itstore.jp/fs/piit/c/gr10

    ○ 製品構成
    詳細は公式サイトを見ていただきたいのですが、簡単にまとめると Stellanova は下記のユニットの組み合わせで構成されています。
    A. ワイヤレスユニット「 APS-WF02JBK 」 (約 23,000 円)
    B. USB DAC アンプ「 DACAPS-DA101J 」 (約 30,000 円)
    C. スピーカー「 APS-SP101J 」 (約 17,000 円)
    基本は上記が全てが含まれたセットで、それによりワイヤレスでのハイレゾ再生を可能としているのですが、 B, C だけが含まれたワイヤレスハイレゾ再生非対応のセットや、 A, B, C それぞれ単品での販売も行われています。
    ワイヤレスユニットは今回入手していないので触れません。これに興味を持つ人は本来のターゲットだと思いますし、そういう使い方をするのであれば Stellanova は唯一無二の製品ですから、公式サイトの情報を見て欲しいと思ったら買って間違いないと思います。

    ○ USB DAC アンプ「 DACAPS-DA101J 」の仕様および使用感について
    公式サイトの情報などからはわかりにくい点を箇条書きでまとめます。端的に言ってオススメです。
    ・安価かつ必要十分な機能・性能を持つ DSD 対応 USB DAC アンプ。 USB 連動電源オンオフ、 PC からのボリューム操作可能。このジャンルの製品を探していて、ニアフィールドで聞く人ならとりあえず買って損はしないと思います。
    ・入力端子は USB 、光デジタル、アナログ、 Bluetooth 。全て背面に端子があります。 USB しか使っていませんが、この用途だけでも十分かと。ちなみに製品には USB ケーブルが付属しますが、ワイヤレスユニットとの接続を前提とした 10cm 程度の短いものです。長いものが必要なら別途用意しましょう。
    ・ USB 接続時の対応フォーマットは公式には 192kHz/32bit の LPCM と 5.6MHz の DSD 対応となっていますが、実際には 384kHz/32bit の LPCM も入力できます。 Mac ではドライバのインストール不要で使用できます。
    ・光デジタル、アナログは使っていませんが、パッシブスピーカーを直結できるアンプでもあるので、この入力があることで汎用性が確保されているという安心感はあります。
    ・ Bluetooth も使っていません。コーデックが SBC しか対応していないので、オマケだと思った方がいいです。 NFC にも対応していません。ワイヤレスで鳴らすのが主目的なら素直にワイヤレスユニットもセットで買いましょう。
    ・出力端子はスピーカー出力、サブウーファー出力、ヘッドフォン出力です。
    ・スピーカー出力端子は背面にあります。埃除けのためか天板がスピーカー端子の上まで覆っているため、ネジは若干まわしづらいです。スピーカーケーブルを通す穴は斜め下向きに空いているため、通した後の収まりはいいです。それなりの太さのケーブルも使えますが、硬いケーブルだと取り回しは少し困るかもしれません。
    ・サブウーファー出力端子、ヘッドフォン出力端子は右側にあります。サブウーファー出力の方が後ろ側で 3.5 mmモノラルミニジャックなので、 L 字コネクタのものを使って後ろに逃がせば邪魔にはなりません。
    ・サブウーファー出力については、設定などはありません。接続した後はウーファー側で調整することになるようです。後述するバスブースト機能はありますが、セットスピーカーなどではやはり低音が不足しますので、いずれ活用したいとは思っています。
    ・ヘッドフォン出力端子は 3.5mm ステレオミニジャックです。イヤフォンなどは接続しやすいですが、大型のヘッドフォンなどで 6.3mm のステレオ標準プラグのものは変換が必要です。なお、音質はそれほどよくはないので Bluetooth 同様オマケ程度に思った方がいいです。変なクセはないので、一時的に使うくらいの位置付けであればまあアリですが、メインで使うつもりならちゃんとしたヘッドフォンアンプを検討した方がいいです。
    ・ボタンは上面後方に電源ボタン、上面手前に入力切り替えボタンがあります。
    ・電源ボタンは電源のオンオフと、本体下部を照らすイルミネーション機能のオンオフに使います。インテリア的に使うならイルミネーションありでもいいのでしょうが、正直眩しいのですぐに電源ボタンの長押しでオフにしてしまいました。 AC アダプタを抜かない限りイルミネーションの状態は記憶されるので、一度オフにしてしまえば大丈夫です。また、 Mac と USB で接続していると Mac にあわせてアンプの電源もオンオフされるので、 Mac との USB 接続専用で使っている限り電源ボタンを押す必要はありません。ですから後方にあっても困りません。
    ・入力切り替えボタンは Bluetooth のペアリングの際にも使用します。手前にあるので押しやすいですが、私は Mac との USB 接続専用で使っているので押したことがありません。
    ・ LED 表示は本体左側側面に再生サンプリングレート表示、正面に入力ソースとボリュームがあります。左側といっても、本体形状が独特の五角形のため、背面を平行に設置すると左側は少し斜めになっており、表示が正面から視認できる角度になります。もっとも、サンプリングレートは最初は確認のために見たりしますが、そのうち見なくなったりするのであまり気にするところではないかもしれません。入力ソースとボリュームについては LED 自体は眩しすぎず見やすいですが、ソースを表示しているプリントについては本体色によっては見にくいことがあるかもしれません。
    ・ボリュームは本体右角にあり、横に回すタイプのものです。滑り止めもあるため回しやすく、わずかにクリック感もあるので狙ったところで止めやすいです。デジタルボリュームですので USB 接続していると Mac からも制御可能で便利です。
    ・バスブーストボタンは前面についており、押すことでオンオフされます。こちらも状態は AC アダプタを抜かない限り記憶されます。私は気分でオンオフしていますが、あまり不自然な盛り方はされないので、低音が出ないスピーカーでは常時オンでもいいかもしれません。
    ・ AC アダプタは比較的小型です。両側ともケーブルが出ているタイプですので、取り回しに困ることはあまりないと思います。
    ・本体の発熱はあまりありません。ずっと音を鳴らしているとほんのり暖かくなる程度です。
    ・ハイレゾのプレイヤーソフトは Pioneer のサイトからダウンロードできますが、別に他のソフトでも問題ありませんし、 OS でデフォルトの出力先をこの USB DAC アンプにしてやれば、全ての音が出力されます。

    ○スピーカー「 APS-SP101J 」の仕様および使用感について
    ・解像度高め。低音は出ない。全体としては価格なり。スピーカーを持っていなくて選ぶのが面倒だったりするならセットで買ってもいいですが、あえてこのスピーカーを選ぶ程ではないと思います。
    ・サイズは小さめですが、作りはしっかりしており、重量感があります。箱鳴りなどもほとんどありません。
    ・中高音の解像度は高いです。ただし少し線が細く、艶はあまり感じません。
    ・見た目通り低音は出ません。バスブーストをオンにしても少し低音のボリュームが増える程度で、迫力はそれほど増しません。ただし下手にブーミーな低音を鳴らすスピーカーよりは聞きやすく、印象は悪くないです。
    ・無理矢理鳴らしてる感が出てくるため、大音量には向きません。ニアフィールドで聞くか、音量は小さめで BGM として室内に流す使い方が向いています。
    ・付属品はケーブル、すべり止め、スパイク。この価格でスパイクが付属しているあたりにこだわりは感じます。
    ・ケーブルは細めで柔く、取り回ししやすいものです。付属品としては標準的かと。このスピーカーで使うならあえて交換する必要もないと思います。

    ○実際に音を聞いた感想
    セットスピーカーと、手持ちのスピーカー KENWOOD LS-VH7 を鳴らしてみた感想です。基本的に Mac の横にスピーカーを置いて PC 用のスピーカーとして使用する、ニアフィールドでの使用を想定しています。
    ・セットスピーカーについては、全体としては前項で書いた通りの感想です。ハイレゾ感は感じられますが、音楽を楽しむには少し力不足だと思います。素性は悪くないので、今までちゃんとした環境で聞いたことがない人であればそれほど不満は感じないと思いますが、オーディオに興味がある人であれば別のスピーカーを探した方がいいと思います。ただし、ニアフィールドでの BGM 使用であればすっきりと聞けますし、場所も取らないので悪くないです。また、サブウーファーを足せば印象が変わる可能性はあるので、そのうち試してみたいとは思っています。
    ・ KENWOOD LS-VH7 は 18 年ほど前に発売されたコンポセット向けのスピーカーで、発売当初の単体価格としては Stellanova のセットスピーカーと同程度ですが、サイズは一回り以上大きいものとなっています。そのサイズの通り、 Stellanova のスピーカーより低音がちゃんと出て、音全体に厚みを感じます。一方、中高音域の解像度はあまりよくありません。単純に音楽を楽しむのであれば LS-VH7 の方が好みの音ですが、せっかくのハイレゾ感をあまり感じられないのが惜しいところです。ちなみに、アンプ側のパワー不足などは感じず、マンションの一室で近所迷惑にならない音量で聞く範囲であれば全く問題ありません。
    ・結論としては、上記 2 機種のスピーカーではアンプの性能を活かしきれていないと感じています。ちゃんと音楽を楽しむなら、もう少し上のクラスのスピーカーを用意した方がよさそうです。ただしアンプの最大出力は 15W ですので、大型のスピーカーを鳴らすのは難しいかもしれません。
    ・個人的には、用途と設置場所の都合からセットスピーカーを常設することにしました。音楽を聞くには少々不満が残りますが、あくまで Mac で音を出す時の使用するもので、最低限ハイレゾの再生環境を確保するという目的は達成できているのでよしとしました。ただし、今後サブウーファーは追加するかもしれませんし、小型で音がいいスピーカーが見つかれば交換するかもしれません。
    ・ DSD 対応についてですが、手元にある同じ曲の DSD と flac を聞き比べましたが、上記の環境ではほとんど違いを感じられませんでした。ちゃんとしたスピーカーなら違いがわかるのかもしれません。もしかしたら曲によるのかもしれませんし、聞く人によってはわかるのかもしれませんが、セット構成での再生では明らかに違いを楽しめるというほどではないように思います。この値段で再生環境を入手できるという点では、付加価値としてアリだと思います。

    ○総論
    ・冒頭のまとめと重なる部分もありますが、主観メインでの総論を。
    ・ USB DAC アンプには大満足。この価格でこの機能、この性能のものは他にはありません。デザインも他にはないものですが、これは好みが別れるところでしょうか。私は黄緑の本体がお気に入りです。使い勝手もよく、サイズも小さいので場所を取りませんし、購入して大正解でした。
    ・ USB DAC アンプを探している人には絶対オススメ。 USB DAC とアンプを別々に買うのもアリですが、ちょっとちゃんとしたものを買うと Stellanova より高くなると思うので、用途限定で不満が出るまでの使い切りと考えて Stellanova を買ってしまっても幸せになれると思います。
    ・ちなみに私は本体を iMac の足の上に置いていますが、ちょうどよく収まっています。この置き方に疑問を感じるような人は、多分ターゲットではありません。用意すべき額が 1 ケタ違うと思います。
    ・セットスピーカーは正直イマイチです。が、私は USB DAC アンプの値段でスピーカーまでセットで入手できたので、省スペースで解像度の高いスピーカーを実質無料で手に入れられたと考えると不満はありません。同サイズもしくはもう少し小型のもので更にいいスピーカーがあれば交換したいところではあります。
    ・積極的にオススメはしませんが、買って損をしたと思うほどでもないと思うので、セットにこだわるならまとめて買ってもいいと思います。
    ・ワイヤレスユニットは用途的に使わないので買いませんでしたが、デザインとしてはピンクのものをアンプと重ねてたいと思っています。ただ、インテリアとして買うにはちょっとお高いですが。
    ・本来のターゲットである、無線でハイレゾを聞きたい人にはフルセットがオススメ。ですが、室内でちゃんと音楽を聞く用途に使いたいならスピーカーは別のものの方がいいかも。ただし私はワイヤレスユニットは使ったことがないので、実際の使用感などがどうなのかはわかりません。まあでもフルセット 7 万円でこのデザイン、この音質ってなかなかないと思うので、ピンときたら買ってしまう方が幸せになねると思います。最終的に USB DAC アンプだけを使いまわすようなこともできますし。

    ○最後に
    ・ Stellanova は安くてモノはいいのに売り方の問題なのかあまり話題になっているのを見ません。さすがにこの状態はもったいないと思ったので、本来のターゲットではない人にも売れるといいなと思い、 USB DAC アンプとしての良さを中心に長文を書いてみました。
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